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井上靖  「石涛」 (新潮文庫)

井上靖  「石涛」 (新潮文庫)
井上最晩年の短編集。どれも味わい深い作品ばかりだが、私は「ゴー・オン・ボーイ」が一番気に入った。この作品を書いた当時、井上の次女の息子は5歳と3歳の二人。次女一家は仕事でフィラデルフィアに赴任している。ちょっとりりしく強いのが長男のタカユキ。
 次女に問う。息子たちがアメリカで最初に覚えた言葉は?それは「ゴー・オン」。
当時井上はカラコルム山脈の盆地の集落フンザからナガールにジープでむかっていた。
そのジープに突然、タカユキにそっくりの子がとびのってきた。絶対ふりおとされないぞ、絶対おろそうとしてもおりないぞと下をむいたまま踏ん張っている。そのまま50分ナガールまでどこに降りるでもなく乗っている。ナガールで降りる。少年は一人で元の道を走りだした。
 見学が終わりジープがまたフンザに向かう。途中で走る少年にあう。井上がジープを停めさせて、少年に乗るように促す。だけど、ピンと立ったまま少年はきっぱりと断る。タカユキに似ている。走りだしたジープの中で井上は気分がよくない。でも振り返って少年に手を振る。そうするときりっとしまっていた少年の顔がほころんで手を振り返す。そして走ってくる。井上は心でさけぶ。走れ走れ「GO ON  GO ON」と。

| 日記 | 09:02 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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