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 「月光」 松本清張 

松本清張  「月光」(双葉文庫)
清張初期の短編を中心に収録。
清張の初期の作品は清張の生きざまが作品に色濃く投影していてずしっと胸に迫る。
最後の「背広服の変死者」が素晴らしい。
主人公はある大手の新聞社広告部の校正係に所属している。広告部の端で、窓もないようなところに係はあり、裸電球の下で仕事をしている。校正係は「会社の縁の下の力持ち。目立たないけどなくてはならない職場である」と係員には思っている人もいる。
 でも校正係にいては、出世の望みはないし、仕事もうねりもなく淡々。主人公、何回も上司の面談で異動を申し出るのだが全く実現しないまま30半ばになる。
 部の忘年会では、他のテーブルでは部長が歓談を長くするが、校生係のテーブルは形だけの励ましがありすーっと通り過ぎるだけ。
 30半ばで未来の点、定年が何もなく到達できることが完全に見えてきた。それと同時に
生きることへの喪失感が襲ってきた。
 校正係がいやになり辞めていった人間もいた。で、でていっても変わらず新聞社に頼ってくる。文房具商社に副社長として引き抜かれていった人。文房具を当然その商社から購入してくれるものと思い横柄な態度で接してくるが、調度係は鼻にもひっかけない。そして商社からは首にされる。かように、勢いでやめてみても、世間の冷たさにあおられるだけで幸せをつかんだ人はなく、惨めで苦しい生活をしている人ばかり。
 本当に清張はサラリーマンをよくわかっている。きっと彼も朝日新聞に勤めていた頃こんな気持ちいっぱいで暮らしていたのだろう。よかった、作家になれて。

by はなゆめ爺や

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