長嶋有 「三の隣は五号室」(中公文庫)
何とも変わっていて面白い小説である。谷崎潤一郎賞を受賞している。
物語はアパート第一藤岡荘に住んできた13世帯の、男一人で住んだ人が多いのだが、物語を描く。始まりは1966年で50年を経た2016年まで。これを長嶋は順番を追って描くのではなく、順不同でしかも、何回も登場する人物もいて、混乱しくらくらする。
1966年はまだ学生運動が花盛りだった。このころの若者は、麻雀をできない者は、人間として認められなかった。安保闘争で亡くなった樺美智子の写真を多くの学生が持っていた。私が社会人になったころは、麻雀から必須遊びはテニスに変わっていた。
そこから、住む人の生活道具、スタイルは大きく変わった。しかし、藤岡荘、建物は変わらない。周囲には高級マンションができ、駐車場が完備され外車や高級車が駐車している。だけど藤岡荘は、自転車と三輪車だけが置かれている。
サッシもないし、屋根はトタン屋根。雨がパタ、パタ、ダン、ダンと大きな音でたたきつける。瓦スレートではそんな音はでない。
台所の水道の蛇口は回転式だった。これを妻はレバー式に変えたいと主張する。回転式ならパッキンを変えればよい。そのパッキンは百円。しかしレバー式は3万円。それで夫婦には諍いが起こる。
面白いのだが、家の電気が落ちる。そんな時、ブレーカーまで、懐中電灯を灯して見に行けばいいのだが、何故かロウソクをマッチで火をつけ、ブレーカーの所まで行く。それで、電気が付くと、使っている電気機器のスイッチを次々消して、テレビだけついたままになる。
また電気が落ちるのが怖いからだ。その昔はヒューズが飛んだといい、電気屋にきてもらった。
長風呂をしていると、どこからかお湯もれして、水位が下がってゆく。かっては足し湯ができなかった。それでも良かった。水位の下がり方がゆっくりだったから。
こんな話が、いれかわりたちかわり書かれ、郷愁をそそる。味わい深い作品だった。
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物語はアパート第一藤岡荘に住んできた13世帯の、男一人で住んだ人が多いのだが、物語を描く。始まりは1966年で50年を経た2016年まで。これを長嶋は順番を追って描くのではなく、順不同でしかも、何回も登場する人物もいて、混乱しくらくらする。
1966年はまだ学生運動が花盛りだった。このころの若者は、麻雀をできない者は、人間として認められなかった。安保闘争で亡くなった樺美智子の写真を多くの学生が持っていた。私が社会人になったころは、麻雀から必須遊びはテニスに変わっていた。
そこから、住む人の生活道具、スタイルは大きく変わった。しかし、藤岡荘、建物は変わらない。周囲には高級マンションができ、駐車場が完備され外車や高級車が駐車している。だけど藤岡荘は、自転車と三輪車だけが置かれている。
サッシもないし、屋根はトタン屋根。雨がパタ、パタ、ダン、ダンと大きな音でたたきつける。瓦スレートではそんな音はでない。
台所の水道の蛇口は回転式だった。これを妻はレバー式に変えたいと主張する。回転式ならパッキンを変えればよい。そのパッキンは百円。しかしレバー式は3万円。それで夫婦には諍いが起こる。
面白いのだが、家の電気が落ちる。そんな時、ブレーカーまで、懐中電灯を灯して見に行けばいいのだが、何故かロウソクをマッチで火をつけ、ブレーカーの所まで行く。それで、電気が付くと、使っている電気機器のスイッチを次々消して、テレビだけついたままになる。
また電気が落ちるのが怖いからだ。その昔はヒューズが飛んだといい、電気屋にきてもらった。
長風呂をしていると、どこからかお湯もれして、水位が下がってゆく。かっては足し湯ができなかった。それでも良かった。水位の下がり方がゆっくりだったから。
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| 古本読書日記 | 06:02 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑