はなとゆめ＋猫の本棚

東北地方の新聞、河北新報に連載された作品。

主人公は高校生の由紀夫。バスケットボール部の選手で学業成績も優秀。

この由紀夫には不思議なのだが4人の父親がいる。
母親の知代が、男4人と同時に付き合い、その間に由紀夫が生まれるが、誰が父親なのかわからず、4人の男は全員父親であることを宣言。一家は由紀夫にこの4人の父親と母親知代、6人で一つの家に暮らしている。

　父親。
鷹：ギャンブラー交際範囲がひろい
悟：大学教授で、由紀夫の家庭教師
葵：バーのマスター。イケメンで女性にもてる
勲：体育教師

この物語のテーマ。

由紀夫の小学校時代の友達小宮山が突然学校に来なくなる。ひきこもりと言われているのだが、性格から小宮山が引きこもりになることはない。どうして登校拒否になったのか。

町を牛耳っている富田林の部下が、ドックレース場で美女といちゃついてるとき、カバンが掏られる、この掏りは誰か。

由紀夫の中学時代の友達鱒二が謎の牛蒡男につきまとわれる。牛蒡男の正体とその目的は？

これは、ミステリーのテーマとは関係ないが、由紀夫を恋している同級生多恵子、その恋の行方。

こんなバラバラに起きることが、伊坂の手さばきにより最後クライマックスで繋がり読者を興奮の坩堝に引き入れる。見事バラバラな出来事を回収。その回収に無理がなく、伊坂の創作力に感心する。

そして、4人の父親の個性も全開。これも見事。

得意の伊坂のユーモアもたくさんちりばめられる。
「ある預言者のところに、男がやってきて、俺は3年後には、生きているか、死んでいるか」
　と聞く。このとき預言者は完璧な回答をする。
「死んでいない。」と。
「死んでいない」は生きている。「死んで、いない」は死んでしまっている。

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