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東野圭吾   「殺人現場は雲の上」(光文社文庫)

 エー子とビー子、同期入社のキャビン アテンダントコンビが活躍する、航空会社ミステリ7編の作品集。エー子は東大出の頭脳明晰な超優秀アテンダント。対してビー子はスレスレで入社試験を通った、劣等アテンダント。つまり漫才ではツッコミ役がエー子、ボケ役がビー子。

 しばしば起こりそうな錯覚。

 行きつけの喫茶店。その店を出ようとしたところ、出入り口の傘立てに自分が持っている傘が差しかけられている。いつか、傘をさして店に来た時、忘れて帰ったのにちがいないと思って持ってかえる。しかし、家に帰ると、持ち帰った傘と同じ傘が家にある。

 エー子とビー子が乗務した飛行機。ある旅行会社が企画した、親と赤ちゃんの旅ツアーの客が乗っていた。全員乗客を降ろした後、点検していたら、熊の着ぐるみに包まれていた赤ちゃんが残っていることがわかる。あわてて、赤ちゃんを持って乗客を追いかける。しかし、当たり前だが、赤ちゃんを機内に置き忘れたという客はいない。

 ツアー参加者はその日、京都の円山公園を散策していた。母親は赤ちゃんの世話から解放されたくて、一緒に参加していた夫に赤ちゃんを預ける。

 トイレに入ってでてくると、入り口のところに熊の着ぐるみを着た赤ちゃんが置かれていた。母親は、夫が置いたものだと思って、その赤ちゃんを抱いて、ツアーバスに戻る。
 と、驚くことに、夫が赤ちゃんを抱いている。母親は自分たちの赤ちゃんではない赤ちゃんを持ち帰ってきたのだ。

 バスは、後部に赤ちゃんを寝かしておく場所がある。そこに、寝かしておくと、ツアー客赤ちゃんも含めて、全員乗ったかとガイドが、乗客が乗ったと答えれば、数えることはしない。

 母親と父親は飛行場の店で、赤ちゃんの人形と熊の着ぐるみを購入して、その人形を抱き、間違った赤ちゃんを放置して飛行機を降りる。

 人が陥る、思い込みと錯覚をうまく東野は物語に仕立てている。

この作品集、東野初期の作品のためか、登場する刑事が、簡単に事件の捜査内容について、エー子、ビー子に話す。これはあり得ない。東野にはめずらしく失敗作品集だった。

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| 古本読書日記 | 05:40 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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