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東野圭吾   「魔力の胎動」(角川文庫)

 大ベストセラー作品「ラプラスの魔女」。この作品で活躍する開明大学医学部教授の羽原の娘、高校生にしか見えない円華の誕生の前日譚作品。5作品が収録されている。

 「この手で魔球を」という作品が面白かった。
詳しくわからないけど、野球の投手が投げるボールは表面に縫い目が少し盛り上がっていることで、投げた球が回転してそれが空気にあたり、変化球が生まれるそうだ。

その中の特殊な変化球にナックルボールというのがある。これは、まったく回転させないボール。このボールに対し空気の粘性や湿度、気圧の影響なども関わってくるものだから、投げた当人もどんな変化が起きるのかわからないという大変な変化球だそうだ。

 投げた投手がどんな変化をするかわからないのだから、受ける捕手も捕球するのが難しい。

 プロ野球の投手石黒は七年前ドラフトで指名されプロ選手になった。変化球とコントロールの良さが特徴だったが、プロの世界では鳴かず飛ばず。もう限界と思ったとき、ナックルボールを会得。これで活路を開こうとする。しかし、大きな壁が立ちはだかった。このナックルを捕球できるキャッチャーがいない。

 捕手は、投手の投げたボールが軸を中心に回転するのを見て、ボールガ自分のどの辺にくるかを瞬時に予測して投げられたボールをキャッチする。

 ところがナックルは回転がないので、どこにボールがくるかわからなくなり予測ができず、パスボールが頻繁に起こる。

 このボールを捕球するには、ボールを途中で目切れしないで、最後までボールをみつめ、そのボールにあわせてグローブの位置をあわせる技術を習得することが肝要。

 この捕球方法を取得したのが三浦という捕手。この三浦が右ひざを痛めて、引退を決意する。その結果、三浦の次の捕手に山東が指名される。しかし山東がどうやっても、ナックルボールを捕球できない。もう無理というときに突如現れたのが、美少女円華。

 円華は、石黒のナックルを難なくキャッチする。円華は、空気の流れの強さ、湿度との関わりを瞬時につかみ、ボールがどんな変化をするかわかる能力を持っている。

 山東は円華の捕球をみて完全にふてくされる。自分には不可能だと・・・。
その時、円華が手袋をとり、痣だらけの膨れ上がった手を山東にみせる。こんな少女が傷だらけになっても、ナックルを捕球できるまで、猛烈な練習を積み上げたのだ。そこに感動して山東はナックルに挑戦を再開する。

 円華は特殊メイクした痣だらけのようにみせた手をみて、にやっと笑う。

今フォークとかチェンジアップを投げる投手はいるが、ナックルを武器に活躍している投手はいるのだろうか。

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| 古本読書日記 | 06:55 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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