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東野圭吾   「マスカレード・イブ」(集英社文庫)

 大ベストセラーで映画化もされた「マスカレードホテル」。この作品で活躍したのが、ホテル・コルシアのフロントクラークの山岸尚美と若き刑事新田浩介。この2人が出会う前のそれぞれの物語を描いたのが本作品。

 恥ずかしい話だが、ミステリーが面白いと思ったのは40代のころ。

きっかけはパトリシア・ハイスミスの作品に出会ったとき。映画では「太陽がいっぱい」だが小説では「リプリー」。それからヒッチコックが映画化したハイスミスの傑作「見知らぬ乗客」。

 殺人を完全犯罪に仕立て上げる方法は、交換殺人を実行すること。それを知ったのが「見知らぬ乗客」。

 そして紹介した作品で、その交換殺人にチャレンジしたのが東野圭吾。

大学の准教授。自ら企業と組んで、革新的技術を完成。特許まで取得しているのだが、彼の上司である教授がその研究を一切認めず、学会では教授の研究だけを発表しようとしている。このままでは、自分の研究成果は埋もれ、企業からの報酬も、その後の利益も自分に還元されない。そこで、教授をこの世から消したくなる。

 一方、親の遺産を継ぎ、その資金を使って、革新的な美容院を経営しようと目論んでいた
娘。親が死ぬ間際になり、突然隠し子が現れる。当然その子にも遺産相続の権利がある。その娘にある割合で遺産相続がされると、美容院進出の資金が大きく不足する。それで隠し子を抹殺したくなる。

 ホテル・コルテシア大阪で偶然であった准教授と遺産相続の娘が、交換殺人の約束をして誓約書までかわす。

 遺産相続の娘が、准教授を殺害して、准教授が隠し子を殺害するということを。
互いに殺人を行う殺害者は被害者とは全く人間関係もないし、当然動機も不明のため、警察が捜査しても、事件は全く解明されない。

 これを解決するためには、関係のない2人は、どこかで交換殺人の件を話し合わなければならない。この場所を特定することが必要。

 2人がまずかったのは、その場所がホテルだったことと、肉体関係を持ったこと。そして、その怪しげな行動を、鋭い感覚と記憶力、観察力を持っていたホテルのフロント クラーク山岸尚美に見られていたこと。

 作品の舞台にホテルを選んだことが東野の勝利につながっている。東野はホテルを深く取材して、ホテルではフロント クラークはどんなことを求められているのかよく調査している。「マスカレード ホテル」を描くためにロイヤル パークホテルを取材している。

 しつこく、突っ込んだ取材をしたのだろうと作品を読んで感じた。

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| 古本読書日記 | 06:00 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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