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森絵都    「できない相談」(ちくま文庫)

 人には小さなくせやこだわりがある。そのこだわりをめぐっての38編の掌編集。

  主人公和也の勤める会社の入る雑居ビルの一階にコンビニがある。

 コンビニの店員はマニュアル通りの対応。だから目立つ店員はいない。ある店員がやめても、あるいは入ってきてもまったくめだたない。いつのまにかやってきて、いつのまにか辞めていく。入れ替わりを客は全くきづかない。

 ところがそのコンビニに福平さんという叔母さんが店員としてはいってくる。このおばさんの応対が変わっている。レジでどの客に対しても大声で何かを必ずしゃべる。

 「はいっ、熱いコーヒー、やけどしないでね。外もね。店の外も暑いですからね。気をつけてお持ちかえりくださいね。外もコーヒーもあっつあつだから。ふふふふふ。」

 こんな感じですべての客に対応する。

 客がうっとうしくなって、和也をはじめ常連が店を変える。店の客がどんどん減っていくだろうと思ったのだが、和也が覗くと、全く減っている様子がない。

 子供を相手に相変わらずの声をあげての福平さん。

 「おじいちゃん、いつもありがとうねえ。はい、いち、にい、さん・・・30万円のお返しでーす。きゃきゃきゃっ。ちゃんとお財布に入れてね。チャックしてね。落とさないでね。明日もまた待ってまーすっ。」

 福平さんの前にはたくさんの70歳を超えた子供たちが並ぶ。
 収録されている「コンビニの母」より。

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| 古本読書日記 | 05:57 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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