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畠仲恵   「とるとだす」(新潮文庫)

 「しゃばげ」シリーズ16作目。同じ系統の作品で畠山健二の「おけら長屋」シリーズがある。「おけら長屋」シリーズは、すでに20冊が刊行され累計150万部販売している。ベストセラー作品なのに、認知度が低いと思っていたら、紹介の作品16作目ですでに870万部販売を記録し、1000万部も視野に入ってきているそうだ。ベストセラーの規模が違う。

「おけら長屋」が知られてないのはしかたないのか。しかし「しゃばげ」シリーズの巨大さには驚愕する。

 「しゃばげ」シリーズには長編が2作あるが、殆どは短編集。この作品は短編集となっているが、連作になっていて、起承転結がはっきりしていて、長編といってもよい物語になっている。

 物語は、長崎屋の大旦那藤兵衛が、薬問屋の寄り合いで、色んな薬を飲まされ、倒れ床に臥す。この毒薬を飲ませた犯人は誰で、藤兵衛の毒をどうやって体からぬいてやるのかを

主人公で長崎屋の病弱の長男一太郎と手代、それから、一太郎の回りにいる、たくさんの可愛らしい妖怪(あやかし)が、解決してゆく過程を描く定番の物語になっている。

 そして最終短編「ふろうふし」で、神様から、藤兵衛の病気を完全に消し去る薬をもらい解決する。

 この作品集の2作目「しんのいみ」の内容がユニーク、抜きんでていて、圧巻だった。

物語の時代、江戸の港の海には蜃気楼がたびたび現れた。蜃気楼があらわれたときは、大山の人だかりがでて、港は祭り状態になった。

 若旦那一太郎といつもの妖、鳴家たちは、見たこともない街を歩いている。しかし一太郎は記憶が消えていて、何故自分がこんなところを歩いているのか全くわからない。

 なんと一太郎は蜃気楼の中に入り込んで歩いていたのだ。通りに鏡屋があり、店の看板である大鏡が店の前にあり、この鏡を覗くと、手代の仁吉や、病に伏している藤兵衛が映っている。それで、一太郎は、藤兵衛の病を治す薬を探しているうちに蜃気楼に入りこんだことを知る。この蜃気楼は、蜃気楼の主が、蜃気楼に呼び込みたい人を入れようと強く願わないと、人は入り込めない。

 そして、街には坂佐という男がいて、この坂佐が枕返しをして、藤兵衛をうつぶせにすれば毒を吐き出させることができることを知る。

 しかし、この蜃気楼の街をどのようにしてとび出て、江戸に帰る方法、さらに坂佐をぬけださせるにはどうするかがわからない。しかも蜃気楼は雨が降ったりすれば消えてしまう。

 この困難をどう切り抜けるのかが読みどころ。大丈夫かとはらはらしながら、読み進む。

それにしても、蜃気楼の街にはいり、迷う。本当に発想がユニークだ。

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| 古本読書日記 | 06:29 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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