fc2ブログ

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

堀川アサコ  「メゲるときも、すこやかなるときも」(講談社文庫)

 私が大学生から就職した頃、今から40年近く前、大都会ではともかく、地方で大学進学する人は圧倒的男性ばかりだった。女性は、多くが高校卒で就職、進学するのは短大が多く4年生大学に進学するのは本当にわずかだった。

 大学、短大に進学する女性の家庭は裕福で、いわゆる上流階級に属した家庭だった。
こういう状況だと、大学出の男性は、女性が高卒でも、結婚にそれほど抵抗はなかったが、女性は、自分と最低でも同等か、自分より有名な大学卒業生としか結婚しなかった。女性が大卒で、男性が高卒というカップルはまず無かった。当然、こんな場合は、女性当人だけでなく、家族、両親が徹底して受け入れなかった。

 主人公の乃亜は、裕福な家庭で育ち、有名大学を卒業、完全な温室育ちで苦労とは無縁で大きくなった。
 この乃亜が選んだ婚約者は、愚鈍でうだつのあがらない男、名前は雪男。しかし、乃亜は雪男が大好きだった。

 雪男は、店舗を借り、食堂をしようと思っていた。しかし、お金が無かった。それで、店舗借り賃や、準備、改装費用をすべて乃亜の父親に出してもらう。しかも、結婚の条件として雪男の資産が一千万円を切った時点で、即離婚すること、離婚に応じない場合は、違約金五千万円を払うこと。しかも、雪男の仕事には、乃亜には一切手間をかけさせない。結婚後乃亜の資産には一切頼らない、乃亜を働らかせない。家庭内の雑務は雪男がする。できなければ即離婚のこと。

 こんな条件を結婚相手乃亜には内緒で、雪男は乃亜の両親とかわして結婚する。

しかし、食堂開店時コロナ感染が襲い、まったく客が来店しない。それで、雪男は「自分を探さないでください。」と書置きして失踪する。

 主人公乃亜が魅力的で素晴らしい。一流大学卒なんてことは全く鼻にかけず、純真に雪男を愛する。料理も店経営など全く経験が無い素人。しかし、明るく、包容力があり、次から次へとトラブルが起きたり、従業員と雪男が通じ合っているのではという疑いが生じても、持ち前の明るさで次々困難を克服してゆく。コロナで外食産業が苦境のなかでも、めげずに前を向いて突破してゆく。

 そして最後は当然雪男と愛を誓い合う。
コロナ下の暗い世相を吹き飛ばす作品だった。

ランキングに参加しています。ぽちっと応援していただければ幸いです。

| 古本読書日記 | 05:54 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

COMMENT














PREV | PAGE-SELECT | NEXT