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朝井リョウ   「少女は卒業しない」(集英社文庫)

 高校生活と、それに連なる卒業を描いた連作短編集。
もちろん全作品、朝井の創作だと思うが、リアルな高校生活に根が張っている作品と、少し高校生活から離れた、想像だけの作品が混在している。

 その中で、良かったと思ったのが「屋上は青」という作品。

孝子と尚樹は幼馴染で、ずっと仲良く成長し、地元の進学校に進む。孝子は卒業後、地元の国立大学に進学し、将来は英語の教師になることを目指す。

 尚樹は、どこかの芸能事務所にはいっているようで、よく授業を欠席して、消えてしまう。
心配した孝子が、懸命に尚樹に勉強を教えてあげる。英語はいいのだが、歴史のような記憶力が必要とする学科は全くダメ。

 高校2年の時、孝子は学級委員長になる。文化祭の出し物を決めるのに紛糾し、全く決まらない。弱り切ったところに、突然、尚樹がやってきて、一人一人にダンスを振付し、みんなでダンスをすることになる。

 ところが、孝子自身が上手く踊れない。
高校は東西南北の建屋があり、東棟は、倉庫になっていて、鍵がかかっていて生徒は入れないようになっていた。尚樹は孝子をその東棟の屋上に引っ張ってゆき、そこで手取り足取り懸命にダンスを教える。

 そしてクラスの出し物は大成功となる。

尚樹は、殆ど授業にでることが無くなり、ついには、退学となる。

 そして、今は卒業式。2人は、思い出の東棟の屋上に並んで寝転び、広がる空を見つめている。孝子は、卒業式の司会をすることになっているのだが、卒業式に行く気配は無い。

 2人だけの卒業式を屋上でしている。

尚樹が言う。孝子は俺の持っていないもの、すべてを持っていると。しかし孝子は言う。
「尚樹は、私の持っていないものを全部持ってる。つまり、みんなが持ってないもの全部。」

この後の文章が、平凡に見えるけど見事だ。

「ちらりと横を見ると、メガネのレンズを通していないぼやけた視界の中で、尚樹がまっすぐ空を見つめているのが見えた。
瞳も、青いTシャツも、浮き出た血管もそのままあの春の青空にくるまれてどこかへ行ってしまいそうだ。」

 高校を卒業したら、もう2人は、それぞれ別の道を歩みだす。旅立ちが、読者にぐっと迫ってくる。

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| 古本読書日記 | 06:06 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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