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原田ひ香   「ランチ酒」(祥伝社文庫)

30年前に出張したドイツの現地法人では、食堂に設置されていた飲料自販機にビールの小瓶があった。あまり買って飲んでいる人はみかけなかったが、同じころフランスのアルザス工場に出張した時は、ビュッフェにアルザスワインが置いてあり、殆どの人が、昼食時ボトルワインを楽しんでいた。

取引先が川崎にあって、30年前に川崎に行くと、朝からやっている居酒屋が駅周辺にあり、朝からくだを撒いている人がいて、驚いた。しかしその居酒屋の雰囲気はすさんでいた。

 最近は、ランチでワインやビールを嗜む人が増え、当たり前の風景になった。

特に、歓送迎会を夜に行うと、参加しない人が増え、仕方なくランチで歓送迎会をすることが多くなった。店内で挨拶や乾杯の気勢をあげているグループもしばしば見かける。

 主人公の犬森祥子は「見守り屋」のバイトをしている。見守り屋というのは老人向けのデイサービスに似ていて、依頼者の自宅に伺い、老人の世話をする。このとき介護サービスはしない、話し相手やまさに見守る仕事を成りあいにしている。

 こんな商売が成り立つのか不思議に思うが、夜間老人を家において、仕事をしなければいけない人が結構いて、その間老人を見ていて欲しいというニーズがあり、洋子は見守り屋としてそこそこ忙しい。

 朝帰りの途中や、昼に食事とお酒を飲み、帰宅すると就寝し、夜仕事に行くという生活サイクルが習慣化している。
 作品はそんな洋子と見守られる人達や昼のみの醍醐味を扱った短編集。

堀田は絵描きで生きてきた。妻翔子も絵が好きで、教師として学校で美術を教えてきた。そんな翔子が半年前ガンで他界する。

 残った堀田は妻が亡くなったことが信じられずずっと嘆き、気落ちした日々を送っている。こんなことから葬式もしていなかった。心配になった友達や近所の人達が入れ替わり堀田の様子を見たり世話をしていた。しかし堀田の嘆きが極端で、同じ話ばかり繰り返すので、段々見守る人が少なくなり、今や友人の藤堂だけになってしまった。藤堂がずっと見守りを続けるわけにもいかないので、主人公の洋子のところに見守りの依頼をする。

 藤堂は、見守り屋の洋子に、堀田の扱いをどうしたらいいか相談する。
洋子はきっぱりと言う。

 「葬式、49日をきちんとやってください。葬式や49日は、亡くなった人を悼む儀式ではなく、人が亡くなったことを認識する儀式。この儀式によって死んだことを確認し、記憶から死んだ人の影が薄くなってゆきます。」

 なるほど、葬式は生き残った人のこれから生きて行くための儀式なのか。

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| 古本読書日記 | 06:44 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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