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打海文三  「ドリーミング・オブ・ホーム&マザー」(光文社文庫)

  主人公の田中聡とさとうゆうは幼馴染。ゆうは、生き方が積極的で行動的。今はフリーの記者をしていて、色んな雑誌に記事を書いている。逆に聡は気後れするタイプで少し弱弱しい。大学を卒業して、ある会社に勤めるがその会社が粉飾決算で摘発され、倒産寸前にまでなり、殆ど解雇状態でやめさせられ、小さな出版社に再就職する。ここでゆうと繋がり、交流が復活する。

 聡には実は、大好きな小説家がいた。名前は小川満里花。ゆうの積極性もあり、憧れの満里花との交流が始まる。もちろんゆうも一緒に。

 この物語、聡、ゆう、満里花の三角関係をテーマで描く。
そして、物語の前半は音楽や映画を背景にして、甘いロマンスが優しい文体で描かれる。
これに驚く。打海もこんな洒落た恋の小説も書けるんだと。
打海と言えば、大藪春彦賞を受賞しているハードボイルドミステリーの得意の作家。それが恋愛小説とは。

 ところが後半、フィリピンで犬コロナウィルスが発生。たくさんの人が死んでしまう。そしてこの犬コロナウィルスが日本にも上陸、大流行となる。このコロナウィルスは犬が人間に噛みつくことによって伝染してゆく。

 犬の特徴。

 元来狼からきているから、自らの敵だと認識すると、猛烈な勢いで噛みつく。
嗅覚が人間の数億倍もあると言われる。

  それから、これがまだ解明されていないのだが、家からどんなに遠く離れても、帰趨能力が優れ、家に帰ってくる。静岡の掛川に住んでいる夫婦が飼い犬6匹を連れ、秋田に行く。その犬が秋田から逃げ出すが3か月かかって掛川の家まで帰ってくるという例がある。
だから犬については、アリバイとかこんなに離れているから、こんな所にいるはずないということが通じない。

  更に犬は、10日くらいは何も食べなくても餓死することは無い
打海はこんな犬の特徴を縦横無尽に使い、後半はハードボイルドミステリーを展開させる。

  そして、犬コロナウィルスが新宿で流行。その患者や、死者が新宿で働く外人の風俗従事者に集中する。
で、新宿で、日本人居住者が、外国人排斥の暴動を引き起こす。
こんな内容を盛込んで、後半は、乾いた文章で得意のミステリーを描く。

  面白いと思ったのが、犬コロナが流行ると、犬を飼っている人の大半が犬を手放すのだが、保健所には連れて行かず、野犬にしてしまう。保健所に連れていけば、殺処分となる。それは飼い主にとっては切ない。それで野犬にしてできる限り飼い主は犬に生きていて欲しいと願うところ。打海の面白い想像。

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| 古本読書日記 | 05:58 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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