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青木祐子   「これは経費で落ちません!10」(集英社オレンジ文庫)

 青木祐子さんの「これは経費では落ちません」シリーズも10冊目になったのか。この本を手にとって少し感慨深くなった。

 今回の作品は、主人公沙名子が勤める天天コーポレーションに国税調査が入り、その対応での出来事がテーマになっている。調査は長くても一週間程度で終了すると思われたが、一か月の長きにわたって行われる。

 調査対象期間内に、天天コーポレイションは、倒産寸前だったトナカイ化粧品の買収だったり、新しい温泉ブルースパ事業の立ち上げがあり、この2つの業務処理での脱税と思われる事案が中心に調べられる。

 色々、厳しく取り調べが行われている様子が描かれるのだが、結局、トナカイ化粧品の社長の会社経費の私的流用や、白紙領収書の偽造の摘発くらいで、大きな脱税案件摘発はなく調査が終了。少し拍子抜けした。

 事案としては、わかりやすく、仰々しく描写はできるけど、これにより、国税庁が手に入れる追徴税金の金額は知れている。

 国税調査。私も会社時代に何回か遭遇したが、もっと事業の根幹にかかわる事案を国税庁は摘発。ごっそりと追徴税金を徴収してゆくのが通例。

 私は、海外取引業務に携わっていた。国税庁の狙いは、商品の値付け、為替変動による価格転嫁、海外送金の妥当性、商品物品の廃却や、在庫品の原価償却費用が適切かが主に調査の対象になった。この方が、ごっそり税金が取れるからである。

 社長の会社経費私的流用などは、事業事案の解釈により発生する追徴金に比べ獲れる税金額が知れていて、あまり現実の税務調査では、中心問題になることは無かった。

 この作品にもあったが、国税庁に長く居座られると、業務に支障をきたす。どうも国税庁の査察官には、追徴課税金額のノルマがあったようで、税務署と解釈で対立するのは避け、
ノルマと思しき金額を、早いとこ、差し出し、査察を切り上げて頂くよう、対応したようなことを思い出す。

 事業の根幹をなす取引における解釈による課税が、国税庁の査察現場では、大きな問題となるが、その実態には踏み込んでいないのが迫力不足になってしまった作品になった。

 まあ、作品はライトノベル。本来を描けば、内容が重くなりすぎ、対象読者層との乖離が大きくなるため、仕方ないのかなというのが作品の印象だった。

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| 古本読書日記 | 07:28 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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