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山田風太郎   「十三角関係」(河出文庫)

 物語の舞台は昭和20年代、回る風車にぶら下げられ、ゆっくり回るのは足、腕、血みどろの美女の首。誰からも愛されていた娼館のマダムが無残なバラバラ死体となって発見される。夫、息子、従業員、新聞記者、麻薬取締官、謎のマスク男など、当夜出入りしていた人は十二人。このうち誰が、マダムを殺害して、そのバラバラ死体を風車にとりつけたのか

 この難事件に挑戦するのが、飲んだくれで身体が不自由な探偵荊木歓喜。

通常、このような推理小説には最初頓珍漢な刑事や探偵などが登場してあれやこれやと捜査するが最終近くまで犯人がわからず進行して、最後に名探偵が登場して見事な推理で真相を暴露して事件は解決するのが定番のパターン。

 しかし、この作品は名探偵荊木が事件直後から登場して、捜査推理を展開する。
この捜査、推理場面が異様に長い。読んでいていつまでも、真相に達せず、だんだん読むのがいやになってくる。

 事件が起こったとされる時間範囲は40分。この間にマダムを殺害し、さらに遺体を解体、風車の羽に取り付けるのは不可能。ということは、殺人は事件が起こったと考えられた時間には、殺人は行われていたことになる。その場合の遺体保管場所は?

 このあたりが事件の真相を解く鍵になる。
この作品はもちろんミステリー推理小説であるのは間違いないが、殺され方、」その遺体処置に異様な美しさ、それに伴い哀切が漂う。

 戦後まもない、混乱している社会が色彩を持って描かれ、美しさを抉り出した小説ともいえる。

 白黒映画が突然カラーに変わった時を思い出させる小説だった。

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| 古本読書日記 | 06:25 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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