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西加奈子   「まにまに」(角川文庫)

西さんが、日々のちょっとした出来事、そして大好きな音楽、心を揺さぶられた本についてつづったエッセイ集。

 西さんを作家に結びつけたのは、高校生の時読んだ、トニ・モリスンの「青い眼がほしい」だ。この作品の主人公は貧しい黒人のクローディア。

 その貧しいクローディアの家に更に貧しい家庭から保護されたピコーラがやってくる。
ピコーラは虐げられ、いじめられていた。

 そして更にピコーラを悲劇が襲う。実父にレイプされる。

この小説は、こんな文章から始まる。
「秘密にしていたけれど、1941年の秋、マリーゴールドは全然咲かなかった。」

この冒頭の文章により、凄惨なレイプ場面に西さんは引き付けられる。凄惨ではなく、その場面の文章は魅力的で、一文、一言一句目を離すことができなかった。その文章や言葉は恐ろしいことに、この上なく美しかったと西さんは書く。

 言葉に対する感性のすばらしさが西さんという作家を作っている。

西さんが女優後藤久美子をテレビでみる。

後藤久美子が言う。
「家族が一番と考えているの。」「そうすることが自然だと思うわ。」

西さんは、その時思う。こんなふうには普通言わないと。
「家族が一番と考えているんです。」「そうすることが自然だと思います。」

こんなことは、私のような凡人にはテレビを見ていて思うことは無い。瞬時に違和感を感じる西さんは、まぎれもない真実の作家だ。

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| 古本読書日記 | 06:01 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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