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アンソロジー   「運命の人はどこですか?」(祥伝社文庫)

 運命的な恋の始まり、出合いの物語を当代人気女性作家が創作、収録した作品集。
どれも、面白い作品ばかり。その中で、熟練した読書家には評価が低そうだが、私には単純で楽しい瀬尾まいこさんの「運命の湯」が良かった。

 両親が恋人時代、最初に観に行った映画が「ロミオとジュリエット」。この映画に感動して、主人公の娘につけられた名前がジュリエット。ジュリエットはこの名前に学生時代みんなにからかわれ辛い時代を送る。

 通っている大学の通り道にあるのが、古くからある銭湯「みちのく湯」。今はどのアパート、住居には風呂があり、銭湯に行く人は殆どいなくなった。しかしジュリエットは銭湯の大きな湯舟につかるのが大好きで、ずっと銭湯に通っていた。

 そして、自分がジュリエット。だから運命の人はやはりロミオでなければならない。

どこにロミオはいるの。どうすれば巡り会えるの?友達の香夏子に相談すると、それはネットを使うべきと言われ、「ロミオさんはいますか?」とネットで呼びかける。

 ものすごい反響がある。たくさんのロミオがネット上に現れる。しかし、それらはすべて私があなたのロミオになってあげるというもので、一人も本当のロミオはいない。

 次に地元のミニコミ誌に、ロミオはいますかと呼びかける。もしいたら近くだからすぐにでも会える。
 しかし反応は皆無。

みちのく湯の番台には、いつもおじいさんが座って、ジュリエットに「今日は元気だね。」とか優しい言葉をかけてくれる。

 今のままの客の少ない銭湯では、もうなくなってしまう。ジュリエットはミニコミ誌に年末はこんな素晴らしい銭湯にいらしてください、とよびかる。少しお客は増えたかもしれない。

そんな時やってきたおばさんが、番台のおじいさんに声をかける。
「ろみおさん。元気?」と。

 ジュリエットはびっくりする。こんなちかくに探していたロミオがいたのだと。

おじいさんは言う。いい加減な親父がつけた名前。風呂屋の三男坊だったので、呂三男と名前をつけられたと。そしてみちのく湯はその日が最後の営業。年明けからは無くなってしまう。よかった最後の最後にロミオといつも会っていたことを知って。

 単純な物語だが、心が暖かくなる。

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| 古本読書日記 | 05:47 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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