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夏川草介     「臨床の砦」(小学館文庫)

 今年の一月末、急に腹が痛くなり、がまんできずに、その日が休日だったので、市の救急診療所に駆け込んだ。1月末はコロナで非常事態宣言がだされていて、全国、コロナ蔓延のピークで大変な時だった。

診療所では対応不能ということで、市の中核病院の救急センターに連絡するが、救急は受け付けストップということで拒否される。隣の市の総合病院は、病院自体でクラスターが発生して診療事態がストップ。

 何とか診療所の先生が頑張ってくれたおかげで、2市隣の病院に頼み込んで、受け入れをしてもらった。その病院の受け入れ説得に3時間。生まれて初めて、救急車に乗せられ、1時間以上ノンストップで搬送された。

 そこでお腹を大きな検査機で検査し、その場で緊急手術が決定。それから手術まで3時間痛い腹に我慢しながら手術を待った。

 未明に手術が終わり、そのままICUに入れられ、数時間すると一般病室に移される。ここがすごい。一般病棟は一部屋4-5人が定員なのだが、コロナのため病室が逼迫していて、12人が身動きとれないほどに詰め込まれていた。そして、この蚕棚のような病室で一泊だけ、尻をかれ部屋を追放され、退院させられた。

 本当に個人的には凄まじい体験だった。

この作品は、長野県の松本を舞台にしている。コロナ患者を受け入れた中規模の総合病院の奮闘を物語にしている。

 まず、驚いたのは、コロナ患者を受け付ける病院が、少ないということ。松本では物語の舞台となった中規模総合病院と市の総合医療センターのみ。松本には伝統のある信州大学医学部があるが信州大学がコロナ患者受け入れを拒否しているように書かれている。これ本当?何のための大学病院?

 それから、当時コロナ患者用の病床確保率が53%とか発表されていたが、これは53%の病床がコロナ患者専用で空いているということではなくて、コロナ患者受け入れ対応がとれ、そのためのぎりぎりながらスタッフの準備ができている部屋があるということを示している。当然通常患者がその病室には入院している場合があり、コロナ患者受け入れは、通常入院患者を別の部屋に移して、コロナ患者の処方処置にあてることができた場合に、初めてコロナ患者を受け入れる。 ということは、通常患者を移せる部屋が無ければ、病院はコロナ患者を受け入れない。53%の部屋がコロナ専用で空き部屋になっているわけでは無い。

 この物語は、コロナの対応で医療現場は大混乱しているが使命感が強い医師スタッフの情熱でギリギリ対応してきたことがよくわかる。緊迫場面の連続。

 夏川はこの作品を今年の4月に上梓している。まだ3か月前だ。夏川の情熱には頭が下がる。筆も乱れもなく、しっかりとコロナに対する奮闘をあらゆる場面を取り上げ描写している。素晴らしい作家だ。
 こんなに大変だったのか。そして、自分がそんな中手術で助かったことに改めて医療スタッフに感謝の念を思った。

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| 古本読書日記 | 06:00 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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