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今村夏子   「むらさきのスカートの女」(朝日文庫) 

 言わずと知れた、大ベストセラーで芥川賞を受賞した作品。

今村さんの作品は、「星の子」「こちらあみ子」でもそうだが、私たちが普段接している世界では、存在しないような人物が登場する。その人物は全く異なった人ではなく、ほんの少しの違い。その造型された人を想像力で膨らませて、今村さんは縦横無尽に動かす。そこに、大きな魅力がある。

 この作品の主人公の私、会話もできず、全く影の薄い女性。どこにいても存在を感じさせない。それで、むらさき色のスカートの女性をしつこく追っかける。そして、ホテル掃除係をしているが、ホテルでの従業員や所長がどんな会話しても、それらはすべて主人公の私には聞こえてしまう。

 それどころか、むらさきのスカートの女性と所長との密会の会話も聞こえてしまう。全く、聞こえないものはありえない。こんな不思議な人にでくわすことはない。

 この本に今村さんのエッセイが収録されている。

今村さんは19歳の時、人との交流、人前にでることができない上に、摂食障害を患い、とても普通の仕事はできないと思い、絵本作家を目指す。しかしうまくいかず、次に漫画家を目指す。これもうまく行かず、仕方なく色んなアルバイトを経験する。どれもいやで辛かったが、その中では、26歳の時経験したホテルの掃除係だけは面白かったと書いている。

 ということは、物語の主人公は今村さん自身を投影しているのか。
主人公、この世の中には存在しない人だと思って作品を読んだが、実は存在している人だったのか。
これは本当に驚いた。でも、今村さん、主人公はやっぱし今村さんが造り上げた人ですよね?

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| 古本読書日記 | 05:37 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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