あさのあつこ 「花宴」(朝日文庫)
主人公紀江は、勘定奉行西野新佐衛門の娘で小太刀の名人。もちろん、父親新左衛門は道場主なのだから当然名人である。その父の道場の一番の弟子が三和十之介。そして紀江と十之介に縁談の話が持ち上がる。
2人は、十之介の申し込みにより手合わせをする。結果は引き分け。縁談はまとまることになるが、式の直前、十之介の兄が殺害される。
十之介は犯人を追って、仇討ちにむかう。仇討ちは、それが成し遂げるまで、藩には帰れない。そのため縁談は破談となる。
紀江は父の勧めにより、小太刀の腕はそれほどないが、人柄が優れている、やはり父の弟子である、勝之進と結婚する。
しかし、紀江には十之介姿がずっしりと心に残っている。本当の気持ちは十之介にある。
勝之進と、それでも、安定した生活を送っていたとき、何と、十之介が仇討ちを成し遂げ、藩にもどってくる。
紀江に対して、十之介も愛する心を持っている。紀江と十之介はどうなってしまうのかという恋物語。
しかし作者あさのさんは、かなり捻った結末を用意して、結局2人は悲恋な関係で終わる。
この恋物語、ラブシーンは全く描かれていない。ところが、あさのさんこれはラブシーンではないのかという描写がある。十之介と紀江の小太刀、立ち合いの場面である。
「十之介が竹刀を持って迫ってきた。紀江の竹刀はその打ち込みを柔らかく受け止めた。力まかせに跳ね返すのではなく、抱きとめる。しなやかに、優しく抱くのだ。二本の竹刀は睦合うように絡まり、音をたて離れた。
十之介の上気した顔が間近にある。・・・・・その顔は、殺気や闘気ではなく、恍惚とした、殆ど喜悦にちかい情が発光している。
こういう相手に巡り合えた。巡り合い、剣を交わすことができた。至福ではないか。この瞬間、今、全てが満たされた。望むものは何一つない。身体の真ん中を悦楽が吹き通ってゆく。」
すごいなあ。ラブシーン以上に、読んでいて少し興奮してくる。あさのあつこの力量に愕く。
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2人は、十之介の申し込みにより手合わせをする。結果は引き分け。縁談はまとまることになるが、式の直前、十之介の兄が殺害される。
十之介は犯人を追って、仇討ちにむかう。仇討ちは、それが成し遂げるまで、藩には帰れない。そのため縁談は破談となる。
紀江は父の勧めにより、小太刀の腕はそれほどないが、人柄が優れている、やはり父の弟子である、勝之進と結婚する。
しかし、紀江には十之介姿がずっしりと心に残っている。本当の気持ちは十之介にある。
勝之進と、それでも、安定した生活を送っていたとき、何と、十之介が仇討ちを成し遂げ、藩にもどってくる。
紀江に対して、十之介も愛する心を持っている。紀江と十之介はどうなってしまうのかという恋物語。
しかし作者あさのさんは、かなり捻った結末を用意して、結局2人は悲恋な関係で終わる。
この恋物語、ラブシーンは全く描かれていない。ところが、あさのさんこれはラブシーンではないのかという描写がある。十之介と紀江の小太刀、立ち合いの場面である。
「十之介が竹刀を持って迫ってきた。紀江の竹刀はその打ち込みを柔らかく受け止めた。力まかせに跳ね返すのではなく、抱きとめる。しなやかに、優しく抱くのだ。二本の竹刀は睦合うように絡まり、音をたて離れた。
十之介の上気した顔が間近にある。・・・・・その顔は、殺気や闘気ではなく、恍惚とした、殆ど喜悦にちかい情が発光している。
こういう相手に巡り合えた。巡り合い、剣を交わすことができた。至福ではないか。この瞬間、今、全てが満たされた。望むものは何一つない。身体の真ん中を悦楽が吹き通ってゆく。」
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