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アンソロジー   「京都迷宮小路」(朝日文庫)

 京都を舞台にしたミステリーを収録した作品集。何篇かはすでに読んでいる作品も含まれていた。

 サーカス団の団長行天驚介が神社の祠の前で殺される。その晩京都は雪が降っていたが、死体には全く雪が付着していない。団長は確かコートを羽織って外出したはず。そのコートは、近くの川から発見される。それにしたって、全く雪が付着していないなんてことは有り得ない。

 実は犯人は、着ていたセーターの中にたくさんのホッカイロをとりつけておいた。ホッカイロのとりつけられない頭の部分は祠の屋根の下にあったので、雪は付着していない。

 これでは大変だろうな。そのまま死体を放置すれば、ホッカイロ装着が露見し、犯人に結び付く。だから、すべてのホッカイロを殺害した後、とりはずし、犯人自らに装着しなおさねばならなかったのだから。

 それに犯人は、どのように足跡を積もった雪につけることなく、殺害現場にたどりつけたのか。道中の木々にロープを張り渡し、ロープの上をサーカスの術により、歩いてきたのだ。すごいトリックだ。収録されている有栖川有栖の「除夜を歩く」より。

 京都のある大学で新設薬学部の建設工事が行われていた。その建設現場から金印ならぬ銀印が発掘された。これは、かの金印と同じ、当時中国魏の国より送られたものではないか。
しかし、この銀印を分析すると中に鉛が含有されていることがわかる。魏の国が、そんな不純物のはいった印を贈ることは考えられない。

 実は金亡者の学長が、ある骨とう品屋から、シーボルトが医塾で使用していた銀の匙を500万円で購入する。これが紛い物であることが別の専門家から鑑定される。それで、学長が銀加工者に頼み、銀印の金型を造り、そこに溶かした匙を流し込んで、銀印を造り、遺跡に埋めておいた。

 薬学部を建設しているのだから、銀印でなく、シーボルトが使っていたものとして、医塾のスプーンだったほうが、薬学部の宣伝になっていただろうに。収録されている門井慶喜の「銀印も出土」したより。

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| 古本読書日記 | 06:01 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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