森絵都 「カザアナ」(朝日文庫)
四十数年前、会社にはいった時、国際競争に立ち向かうためには、日本の賃金は高すぎるという分析がはじまりつつある時で、ぼちぼち賃金の安価な国に生産を移すということが始まりだしていた。
当時は、中国は自由経済社会が成り立っていなかったので、進出先は韓国や台湾が多かった。私の会社も韓国提携先を見つけOEM生産をした。
この間ニュースでびっくりしたのだが、韓国のサムスンの平均賃金は1440万円/年もある。日本はトヨタが880万円、これでも高額と思うのだが・・・。下手をすると、韓国企業が安い労働力を求めて日本に工場進出をするような時代になってきている。
日本はバブルがはじけて以来、全く成長が止まった。国やグローバル経済を引っ張ってゆく技術や事業が無く、次々他の国に追い抜かれる状態になった。
この作品では東京オリンピックが開催された20年後の日本を扱っている。すでに、世界から遅れてしまった日本は、観光革命と称し観光立国として国をまわして行こうとしていた。しかも、民族主義が権力者により徹底され、髪の色まで黒でなければならなくなった。
物語は、中学生理宇の住む家が、観光革命によって景勝特区に指定され、厳しい規定により、一刻も早く庭の手入れをせねばならなくなったところから始まる。
この規定からはずれると、特別支援居留区に強制移動さえられ、地獄のような生活を強いられることになる。
追い詰められた状況の中、株式会社カザアナという造園会社から、平安時代から継承されている怪しき力を持った人たちがやってきて庭を造り変え、淀んだ状態にあった庭に風穴をあけてゆく。
国がこんな風になってしまうと、一人の権力者の横暴がまかり通り、まわりはすべて、彼につきしたがうだけの存在となる。
平安時代に横暴の限りを尽くして、権力についた平家を、この風穴たちと一緒にたちむかい、平家を倒したのと同じように、現在の権力に立ち向かう4つの話が収録されている。
やはり、この話を読むと、プーチンを想起せざるを得なくなる。ロシアにカザアナを貸したくなる。
他の作家がこのようなディストピアを描くと、暗鬱な雰囲気になるのだが、さすが森さん、軽やかにあくまで明るい雰囲気で物語を進める。そこに作家の優れた力量を改めて認識する。
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当時は、中国は自由経済社会が成り立っていなかったので、進出先は韓国や台湾が多かった。私の会社も韓国提携先を見つけOEM生産をした。
この間ニュースでびっくりしたのだが、韓国のサムスンの平均賃金は1440万円/年もある。日本はトヨタが880万円、これでも高額と思うのだが・・・。下手をすると、韓国企業が安い労働力を求めて日本に工場進出をするような時代になってきている。
日本はバブルがはじけて以来、全く成長が止まった。国やグローバル経済を引っ張ってゆく技術や事業が無く、次々他の国に追い抜かれる状態になった。
この作品では東京オリンピックが開催された20年後の日本を扱っている。すでに、世界から遅れてしまった日本は、観光革命と称し観光立国として国をまわして行こうとしていた。しかも、民族主義が権力者により徹底され、髪の色まで黒でなければならなくなった。
物語は、中学生理宇の住む家が、観光革命によって景勝特区に指定され、厳しい規定により、一刻も早く庭の手入れをせねばならなくなったところから始まる。
この規定からはずれると、特別支援居留区に強制移動さえられ、地獄のような生活を強いられることになる。
追い詰められた状況の中、株式会社カザアナという造園会社から、平安時代から継承されている怪しき力を持った人たちがやってきて庭を造り変え、淀んだ状態にあった庭に風穴をあけてゆく。
国がこんな風になってしまうと、一人の権力者の横暴がまかり通り、まわりはすべて、彼につきしたがうだけの存在となる。
平安時代に横暴の限りを尽くして、権力についた平家を、この風穴たちと一緒にたちむかい、平家を倒したのと同じように、現在の権力に立ち向かう4つの話が収録されている。
やはり、この話を読むと、プーチンを想起せざるを得なくなる。ロシアにカザアナを貸したくなる。
他の作家がこのようなディストピアを描くと、暗鬱な雰囲気になるのだが、さすが森さん、軽やかにあくまで明るい雰囲気で物語を進める。そこに作家の優れた力量を改めて認識する。
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| 古本読書日記 | 06:31 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑