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村田紗耶香    「生命式」(河出文庫)

 本のタイトルにもなっている作品を含め、作者村田が自選した短編集。
今の世界から離れた星新一や筒井康隆の世界を描いていると思わせる作品が多い。しかし彼らの作品と異なり、村田さんの作品はかなり毒がある。

 少し前に世界一の富豪の一人、テスラのCEOイーロンマスクが日本は消滅する国と指摘した。老齢化が進み、出生率がマイナスになり、人口減少が止まらず、そのうち消滅してしまうと予想したのである。
しかし、世界も日本も変化して、今のままでは済まない。

 タイトルになっている「生命式」とは今でいう「葬式」に近い概念。しかし、今の葬式とは大分異なる。

 亡くなった人を偲んで式参加者が死んだ人の身体を料理して食べる儀式。だいたいが鍋料理となる。

そして、参加者は死んだ人の生まれ変わりを創造するために、式終了後、参加者同士で受精という行為を、あちらこちらで行う。このころになるとSEXという言葉はなくなり、すべて受精と言われるようになる。そして受精は、秘め事と思われ、人のいない所で行うものでは無くなり、恥ずかしさも消え、公園など普通一般の場所で行われるようになる。

 こうなると、多くの子供ができるようになる。生まれた子供は、もちろん受精した人達が育ててもよいが、国が施設を作り、そこで育ててくれる。

 国が育てている間に、育ての親がみつかり養子となることもあるし、仕事につき独り立ちできるまで、施設で育つこともできる。
 つまり、殆ど生まれた子は、国の子となるのである。

この村田さんの発想は、面白いと思うし、意外に将来は家族という概念が消え、こんな世界がやってくるように思える。
 そうなると日本では、生まれる子供がどんどん増える。

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| 古本読書日記 | 05:55 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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