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黒木亮    「鉄のあけぼの」(下)(日経文芸文庫)

 黒木の作品は、国際ビジネスでの熾烈の戦いを描きその見事な緊迫した作品で多くの読者を得た。

 この作品は黒木にしては不思議な作品だ。川崎製鉄を興し躍進に導いた稀有の経営者とされる西山弥太郎の人生を書いている。

 西山と同時代で有名な経営者といえば、松下幸之助、本田宗一郎、井深大である。彼らは名経営者として、多くの作品が出版され、人々の賞賛を浴びている。

 しかし、正直、この本を手にとるまで、西山の名前は知らなかった。
製鉄業界では日本製鉄の永野重雄、稲山嘉寛、住友金属の日向方斉が有名。西山は知らなかった。しかも川崎製鉄が超一流の製鉄会社という認識もなかった。

 もちろん、西山の千葉製鉄所の建造。その際、世界銀行からの融資獲得。岡山水島製鉄所の建造での手腕。戦争直後の大労使紛争の収束での活躍については、読んでいて、すごい手腕だと感心した。

 しかし現在は、川崎製鉄という製鉄会社は存在しない。日産のゴーンにより鉄鋼供給会社から締め出された日本鋼管が川崎製鉄と合併してJFEホールディングに変わっている。

 黒木は何故、西山を取り上げて作品にしたのだろうか。
正直、戦後すぐの経営者は、幾多の苦難はあるが、日本経済は拡大基調、人々の生活も向上。お金を持ってくる力があったらだいたいの経営者は成功している。

 正直製鉄業界は、国際競争力を失い、今は苦境にたっている。

 こんな時に西山が登場して、この苦境を突破する経営をできたなら、名経営者と賞賛するが、
現在において、西山を特別な能力の秀でた経営者と認めることには躊躇してしまう。

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| 古本読書日記 | 05:52 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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