fc2ブログ

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

窪美澄    「いるいないみらい」(角川文庫)

  子供と家族をめぐる5つの作品が収録されている。
最後に収録されている「金木星のベランダ」が印象に残った。

主人公の繭子は、親に捨てられ、18歳まで施設で育った。高校卒業後、運送会社の事務員をして、その後製菓専門学校に通い、卒業後パン屋3軒で働く。その3軒目で同じパン職人の栄太郎に会い、将来店を持つことを、約束する。2人は休日のとき、いろんなパン屋をめぐり、パンを食べ、最高のパンを作ろうと技術を練り上げる。

 そして35歳の時、古い2階家を購入、1階で子羊屋というパン屋を開く。最初は苦戦したが、メロンパンが評判を呼び、経営は順風満帆になった。

 43歳の時、栄太郎が子供が欲しいと言い出す。しかし、繭子はお父さんもお母さんも知らない。とても子供を育てられるとは思えない。でも、そのことは栄太郎に内緒にしている。

 困った繭子は毎日閉店間際にやってくる90歳にもなろうとする老人節子さんに、思い余って相談する。
 節子さんは青春時代を戦争時代に過ごす。多くの男の人が戦死して、結婚相手が見つからず、90歳になるまでずっと一人暮らし。男女平等なんて概念がないなか、女性が一人生きることは大変だった。

 繭子の悩みを聞いて、節子さんが言う。

「欲しいと思ったものが手に入らないこともあるの。手に入らなくても、欲しい、欲しいって手を伸ばすのが人間だもの。だけど、すでに持っているものの幸せに気づかないことも時にはあるわね。それに、欲しい欲しいと思っていて、諦めたときふいに手にはいることもある。あなたは、私の大切な娘、そして旦那さんは私の息子。年老いて、突然可愛い子供が手に入った。ご主人には何でも話しなさい。怖がることはないのよ。」

 繭子はこの言葉に勇気をもらって、栄太郎に話す。栄太郎が答える。

「繭子は何でもうまくいかないが口癖。しかしパンもそうだけど、俺よりいつも上手くパンを焼く。自分の子供が欲しいと言ってるのではない。繭子と一緒に子供を育てたいんだ。」

2人はしばらくして、施設に2人の子供を探しに行く。

ランキングに参加しています。ぽちっと応援していただければ幸いです。
<

| 古本読書日記 | 06:36 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

COMMENT














PREV | PAGE-SELECT | NEXT