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黒木亮   「排出権商人」(角川文庫)

 1997年で京都で開催された国際会議COP3で決定された京都議定書。地球温暖化を防ぐため1990年比で2008年から2013年において、排出温室効果ガスの削減量が決定され、日本は6%の削減することが決められた。

 しかし、日本ではそれまで原発の稼働推進を含め、温室効果ガスの削減が進められていて、とても6%の削減は無理だった。

 この削減を守るため、決定された削減率以上の削減できた量を、削減できない国や企業に売るための証券、排出権が作り上げられた。この排出権の売買により地球規模での温室効果ガスの削減を実現しようとするわけだ。

 大手エンジニアリング会社で総合職女性第一号として採用された主人公松川冴子は新設された地球環境室長に抜擢された。しかし室員は松川を含めたった3人で、この排出権売買に取り組むことになる。

 温室効果ガスの削減には2つの方法がある。現実に削減が実現できている工場などを探し、その技術を日本の工場に移植してガスの削減を実現する。

 もう一つは、削減実現のプロジェクトを他国で立ち上げ、ここで得た排出権を日本の企業に販売する。
 この仕事は大変である。物語はマレーシアから始まる。イスラム国なのに養豚が盛ん。しかし国の規制が厳しく、発生した汚物やメタンガスの削減技術が確立されている。この技術を日本の養豚場に紹介、導入を目論もうとする。

 更に中国ウィグル地区や山西省などを飛び回り、太陽光発電の設備を作ることを説得。そのための資金集めをして、プロジェクトを計画実行する。

そこで生まれた排出権を日本企業に販売する。新しい仕事だから役所の手続き、整備することから始めねばならない。その際には、役所の人間に賄賂が必要となる。困難極まる仕事だ。

 世界の役所をめまぐるしく飛び回る松川の仕事ぶりは、超人としか表現しようがない。
結果最後は3人で始まった室のスタッフは18人に増える。そこまでの壮絶な松川の戦いが熱く描かれる。

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| 古本読書日記 | 06:27 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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