黒木亮 「トップ・レフト」(祥伝社文庫)
黒木亮のデビュー作。
トップ・レフトというのは、大きな金額の投資案件を多くの投資会社、銀行などに募って、投資をまとめる。そのまとめた会社名が作成した目論見書の一番上の左端に書かれ、これより上や端に書かれる会社がない会社を指す。非常に名誉のことであるとともに、手数料を最も多く手に入れる会社を指す。
この作品、日本最大手の自動車メーカーのイラン工場の建設投資案件1億5千万ドルのトップ・レフト獲得をめぐり、大手都銀のロンドン支店次長今西と、元は今西と同じ都市銀行のライバルで、アメリカの投資会社に移った龍花との熾烈な競争を描く。
ややこしいのは、この投資先が自動車メーカーのトルコ支店。投資金額は、自動車メーカーに返済能力は十分あるのだが、トルコが多重債務国家になっていて、トルコが国として支払い能力がないのではということで、投資会社や銀行を集めるのが大変なこと。特に、今西の大手都銀の本社審査部門がトルコへの出資は否定的でこれを突破することが大きな壁となる。
その困難を克服して、今西の大手銀行はアメリカ投資会社の龍花をやぶりトップレフトを占めることに成功。これでバンザイと思ったら、ここにカラ売り屋の謎の男伊吹が登場して、自動車メーカーのトルコ法人の株を空売りして、今西の大手都銀は窮地においこまれる。最後まで息をつかせない緊張の連続。面白い小説だった。
私の会社時代。営業関連の仕事で海外出張した時は、超一流まではいかないが、一流ホテルに宿泊できた。ところが、海外工場への出張の際の宿泊先は、環境が悪い田舎で劣悪だった。だいたいは宿泊施設を借りたり、プレハブを建ててそこで食事をしたり、みんなで寝泊まりした。
この小説でも工場建築現場はイラン。しかも当時は、戒律の厳しいホメイニ時代。酒などぜいたく品を持ち込めば、取り上げられるだけでなく、刑務所に留置される。
建設も自動車会社や建設メーカーの人間が行うのではなく、3次、4次の孫請け以下の会社の人が行う。こんな人は、外国語もできない。それで、多くの日本人の大工、左官屋さんが入国で捕まり、そのまま刑務所に連行される。
一旦連行されると、2,3か所刑務所に回されどこへ行ったのか行方不明になる。そんなことがこの作品でも描かれる。海外、特に生産工場での仕事は、苛酷である。
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トップ・レフトというのは、大きな金額の投資案件を多くの投資会社、銀行などに募って、投資をまとめる。そのまとめた会社名が作成した目論見書の一番上の左端に書かれ、これより上や端に書かれる会社がない会社を指す。非常に名誉のことであるとともに、手数料を最も多く手に入れる会社を指す。
この作品、日本最大手の自動車メーカーのイラン工場の建設投資案件1億5千万ドルのトップ・レフト獲得をめぐり、大手都銀のロンドン支店次長今西と、元は今西と同じ都市銀行のライバルで、アメリカの投資会社に移った龍花との熾烈な競争を描く。
ややこしいのは、この投資先が自動車メーカーのトルコ支店。投資金額は、自動車メーカーに返済能力は十分あるのだが、トルコが多重債務国家になっていて、トルコが国として支払い能力がないのではということで、投資会社や銀行を集めるのが大変なこと。特に、今西の大手都銀の本社審査部門がトルコへの出資は否定的でこれを突破することが大きな壁となる。
その困難を克服して、今西の大手銀行はアメリカ投資会社の龍花をやぶりトップレフトを占めることに成功。これでバンザイと思ったら、ここにカラ売り屋の謎の男伊吹が登場して、自動車メーカーのトルコ法人の株を空売りして、今西の大手都銀は窮地においこまれる。最後まで息をつかせない緊張の連続。面白い小説だった。
私の会社時代。営業関連の仕事で海外出張した時は、超一流まではいかないが、一流ホテルに宿泊できた。ところが、海外工場への出張の際の宿泊先は、環境が悪い田舎で劣悪だった。だいたいは宿泊施設を借りたり、プレハブを建ててそこで食事をしたり、みんなで寝泊まりした。
この小説でも工場建築現場はイラン。しかも当時は、戒律の厳しいホメイニ時代。酒などぜいたく品を持ち込めば、取り上げられるだけでなく、刑務所に留置される。
建設も自動車会社や建設メーカーの人間が行うのではなく、3次、4次の孫請け以下の会社の人が行う。こんな人は、外国語もできない。それで、多くの日本人の大工、左官屋さんが入国で捕まり、そのまま刑務所に連行される。
一旦連行されると、2,3か所刑務所に回されどこへ行ったのか行方不明になる。そんなことがこの作品でも描かれる。海外、特に生産工場での仕事は、苛酷である。
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| 古本読書日記 | 06:24 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑