上橋菜穂子 「夢の守り人」(新潮文庫)
ファンタジー小説はどうも苦手だ。あり得ない世界で、妖怪や天使、悪魔が縦横無尽に動き回り、いろんな妖術を駆使して、戦う。こういった世界の映像がどうも私には上手く描けず、読んでいるうちについていけなくなり、読むのをあきらめてしまうのがしばしば。
上野さんの有名な「守り人」シリーズ。食わず嫌いは良くないと思い、やっと手に取ってみた。「守り人」シリーズは10巻まであり、アニメ映画化も進んでいるそうだ。今回読んでみた作品は第3巻。最初から順番で読んでいかないとは、私はやはり天邪鬼だ。
この作品には、現実に生きている世界と夢の世界と2つの世界がある。夢の世界は一面花の世界。人は起きている時は、魂も体も一体になっているが、眠ると魂は身体から離れて、花の世界に飛んでゆく。そして、その花の世界で現実とは別の人生を歩む。これが夢である。
たいていの人は現実の世界で辛く苦しいことに抗いながら生きている。そして大概夢の世界でも、同じような辛い生活をしている。
ところが、この物語では、花園の入口には夢の守り人がいて、飛んできた魂が見る夢を幸せに包まれた夢にしてしまう。こうなると、その魂は、目が覚めるとき、残してきた身体に帰って、苦しい生活をするのがいやになり現実世界に帰ろうとしなくなる。
こうなると現実に残された身体は魂がないため、ずっと寝たままとなる。だから、生きた活動はしなくなる。食事もしなくなるから、やせ細り、5日もすれば、死んでしまう。
事実、この物語でも、第一の皇子の母一ノ妃、第二皇子のチャグム、薬草師タンダの親戚の娘カヤたちの魂が現実の世界に戻ってこなくて、眠ったままになる。
この戻りたくない魂を説得し、現実の世界に戻すのが、聖導師と組む呪術師の役割。
呪術師トロガイが最後に言う。
「したたかな人びとでも、ふっと迷うときがある。昼の力ではおさえておけない夢をかかえることがある。呪術師はね、そんな人たちが、思いっきり飛ばしてしまった魂を、死の淵ぎりぎりのところから、連れて帰らなければならない。夜の力と昼の力の境目に立っている。わしらはね、夢の守り人なのさ。」
上野さんの構想と、わかりやすい文章で面白かった。完全に食わず嫌いだった。
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上野さんの有名な「守り人」シリーズ。食わず嫌いは良くないと思い、やっと手に取ってみた。「守り人」シリーズは10巻まであり、アニメ映画化も進んでいるそうだ。今回読んでみた作品は第3巻。最初から順番で読んでいかないとは、私はやはり天邪鬼だ。
この作品には、現実に生きている世界と夢の世界と2つの世界がある。夢の世界は一面花の世界。人は起きている時は、魂も体も一体になっているが、眠ると魂は身体から離れて、花の世界に飛んでゆく。そして、その花の世界で現実とは別の人生を歩む。これが夢である。
たいていの人は現実の世界で辛く苦しいことに抗いながら生きている。そして大概夢の世界でも、同じような辛い生活をしている。
ところが、この物語では、花園の入口には夢の守り人がいて、飛んできた魂が見る夢を幸せに包まれた夢にしてしまう。こうなると、その魂は、目が覚めるとき、残してきた身体に帰って、苦しい生活をするのがいやになり現実世界に帰ろうとしなくなる。
こうなると現実に残された身体は魂がないため、ずっと寝たままとなる。だから、生きた活動はしなくなる。食事もしなくなるから、やせ細り、5日もすれば、死んでしまう。
事実、この物語でも、第一の皇子の母一ノ妃、第二皇子のチャグム、薬草師タンダの親戚の娘カヤたちの魂が現実の世界に戻ってこなくて、眠ったままになる。
この戻りたくない魂を説得し、現実の世界に戻すのが、聖導師と組む呪術師の役割。
呪術師トロガイが最後に言う。
「したたかな人びとでも、ふっと迷うときがある。昼の力ではおさえておけない夢をかかえることがある。呪術師はね、そんな人たちが、思いっきり飛ばしてしまった魂を、死の淵ぎりぎりのところから、連れて帰らなければならない。夜の力と昼の力の境目に立っている。わしらはね、夢の守り人なのさ。」
上野さんの構想と、わかりやすい文章で面白かった。完全に食わず嫌いだった。
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| 古本読書日記 | 05:59 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑