凪良ゆう 「流浪の月」(創元推理文庫)
映画化され、37万冊販売、しかも本屋大賞受賞作、大ベストセラー作品。
「でも多分、事実なんてない。出来事にはそれぞれの解釈があるだけだ。」
事実と解釈の解離がこの作品のテーマ。
主人公の更紗は、父親が幼いとき亡くなる。母親は自由奔放で、付き合っている男と失踪、それでおじさんの家に預けられる。
その家の一人息子孝弘が、更紗に乱暴をする。時には襲おうともする。それに、おばさんともぎくしゃく、おじさんの家に更紗はいたくなくなる。
ある日、公園で本を読んでいると、若い男に声をかけられる。少し会話をして更紗は言う。
「家に帰りたくないの。」青年に「じゃあ、うちにくる。」更紗はうなずいて、青年についてゆく。
青年の部屋はいごこちもよく、青年は優しく、孝弘のように身体を触ったり乱暴するようなことは全くない。更紗はずっとここにいようと思う。
しかし、おばさんが警察に捜索願いをだし、それがニュースとなる。ここから、マスコミは、目撃者の証言から、更紗は拉致され、犯人はロリコンで更紗は部屋で虐待され性的暴力を受けているというステレオタイプの解釈を流す。
青年と更紗は部屋にいるところを発見され、警察、マスコミ、群衆のステレオタイプの解釈に巻き込まれる。その時、更紗は自分が自ら青年に付いていった。青年は優しかったと言わねばならないと思ったが、言葉にできなかった。そのため、更紗は解放されたが、青年文は警察に連行される。
そして2人は引き離され、10年後に文のやっている喫茶店で再会することになる。
文は更紗に身体を合わせて更紗の思いに応えてあげられない。更紗も文に恋心は抱くことはできない。でも、更紗は文のそばにいたい。
2人の関係について、世間は全く理解できない。雑誌が、ロリコン少女暴漢魔が、かって凌辱した女性と一緒に住もうとしていると何週にもわたり特集をくみ扇情的に書き、これにネットが追従する。更に、その時付き合っていた亮も更紗に暴力を振るう。
ネットで、今はこういうことだろうが、いつのまにかこういうことだと断定的に言われ拡散する。
この物語でもう一つ象徴的に描かれていることが、更紗は夕食にいつもアイスクリームを食べたいという。そんなことはあり得ないと、皆から否定される。どうしてアイスが食べたくなるか、まわりは誰も聞こうとしない。
常識、圧迫感、ネット、マスコミが特異の人を彼らの決めつけた解釈で責め上げる。恐ろしさを感じた作品だった。
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「でも多分、事実なんてない。出来事にはそれぞれの解釈があるだけだ。」
事実と解釈の解離がこの作品のテーマ。
主人公の更紗は、父親が幼いとき亡くなる。母親は自由奔放で、付き合っている男と失踪、それでおじさんの家に預けられる。
その家の一人息子孝弘が、更紗に乱暴をする。時には襲おうともする。それに、おばさんともぎくしゃく、おじさんの家に更紗はいたくなくなる。
ある日、公園で本を読んでいると、若い男に声をかけられる。少し会話をして更紗は言う。
「家に帰りたくないの。」青年に「じゃあ、うちにくる。」更紗はうなずいて、青年についてゆく。
青年の部屋はいごこちもよく、青年は優しく、孝弘のように身体を触ったり乱暴するようなことは全くない。更紗はずっとここにいようと思う。
しかし、おばさんが警察に捜索願いをだし、それがニュースとなる。ここから、マスコミは、目撃者の証言から、更紗は拉致され、犯人はロリコンで更紗は部屋で虐待され性的暴力を受けているというステレオタイプの解釈を流す。
青年と更紗は部屋にいるところを発見され、警察、マスコミ、群衆のステレオタイプの解釈に巻き込まれる。その時、更紗は自分が自ら青年に付いていった。青年は優しかったと言わねばならないと思ったが、言葉にできなかった。そのため、更紗は解放されたが、青年文は警察に連行される。
そして2人は引き離され、10年後に文のやっている喫茶店で再会することになる。
文は更紗に身体を合わせて更紗の思いに応えてあげられない。更紗も文に恋心は抱くことはできない。でも、更紗は文のそばにいたい。
2人の関係について、世間は全く理解できない。雑誌が、ロリコン少女暴漢魔が、かって凌辱した女性と一緒に住もうとしていると何週にもわたり特集をくみ扇情的に書き、これにネットが追従する。更に、その時付き合っていた亮も更紗に暴力を振るう。
ネットで、今はこういうことだろうが、いつのまにかこういうことだと断定的に言われ拡散する。
この物語でもう一つ象徴的に描かれていることが、更紗は夕食にいつもアイスクリームを食べたいという。そんなことはあり得ないと、皆から否定される。どうしてアイスが食べたくなるか、まわりは誰も聞こうとしない。
常識、圧迫感、ネット、マスコミが特異の人を彼らの決めつけた解釈で責め上げる。恐ろしさを感じた作品だった。
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