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畠中恵    「すえずえ」(新潮文庫)

 「しゃばげ」シリーズ13作目の本。素直に一作目から順番に読めばいいのに、手に入った順に読んでいる。この本には5つの中編が収録されている。

 上手いと思ったのは「おたえの、とこしえ」。

主人公の若だんな一太郎の父藤兵衛は、薬師問屋兼廻船問屋の長崎屋を営んでいる。今は上方で大きな商売があり、持ち船の常盤丸に乗り上方に出張している。

 そこに、上方の商売相手の赤酢屋七郎右衛門が訪ねてくる。上方の米会所の仲介をしている、つまり相場師である。主人藤兵衛が不在のため、妻のおたえが応対する。

 20日前に、ある藩主から依頼された商品を上方で、藤兵衛の長崎屋に販売したのだが、その商品が10日で江戸には運べるということだったが、20日たった今でも藩主の所に着いていない。すでに約束の納品期限を過ぎている。それで藩主よりお金の回収ができなくなっている。それで、長崎屋を赤酢屋に譲って欲しいと。

 藤兵衛は上方に行ったきり、何の連絡もない。いったい上方で何が起こっているのか、病身の若だんなと守り役として、長崎屋に住みついている妖の守狐と一緒に、長崎屋の持ち船神楽丸で上方に向かう。

 そこで、若だんなは赤酢屋が米相場で大失敗をして、長崎屋の常盤丸に操作して沈めようと細工し、江戸に運べないようにしていたことを知る。しかし藤兵衛がその細工を何とか克服して、今常盤丸は江戸に向かって帆を進めている。

 このことを早くおたえに知らせねばならない。
しかし江戸時代は連絡手段は特急飛脚しかない。これだと半月かかる。そんなには待てない。

 驚くことに赤酢屋の悪事は、若だんなが真相を入手後数時間後には長崎屋おたえが知ることができた。

 守狐とその仲間の狐たちが木にのぼり、その天辺で旗を振る。それが手旗信号になっていて、その信号をそれぞれの天辺にいる狐が引継ぎ江戸のおたえの所に届けたのである。

 畠中さんの発想が実に素晴らしい。

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| 古本読書日記 | 05:53 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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