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河合隼雄 村上春樹  「村上春樹、河合隼雄に会いにいく」(新潮文庫)

 人見知りが強い作家村上春樹には、本当に珍しい臨床心理学者の権威河合隼雄と京都で一緒に二泊したときの対談集。
 この作品は平成8年に出版されている。阪神淡路大震災の直後で、村上は当時「ねじまき鳥クロニクル」を執筆中。

 村上がこの対談で、自分の小説について語っている。

自分の小説はどうしても長編になる。小説を執筆するときは、どんな構造にするか決める。構造とは2巻で止めるか、3巻にするかということ。おおまかなストーリーはあるが、殆ど何も決めないで執筆する。でも、自分はプロだから、最後はしっかりとカタルシスで締める。

 途中で執筆していてある行動を登場人物がする。そこで、村上は考える、どうしてこいつはこんな行動をとったのだろうか。それを解析して、次へ進む。

 これはどういうことなのだろうか。そのヒントがその少し前に村上の小説の真髄として語られる。

「ぼくという人間は、自分ではある程度病んでいると思う。病んでいるというより、むしろ欠落部分を抱えていると思います。人間というのは、もちろん多かれ少なかれ、生まれつき欠落部分を抱えているもので、それを埋めるためにそれぞれにいろいろな努力をするのですね。僕の場合は、30過ぎて物書きをはじめて、それがその欠落を埋めるためのひとつの仕事になっていると思うのです。」

 そうか、物語を書いていると、しょっちゅう欠落がいろんな形で執筆中に発生して、それをどうやって超えていくのかを創造する、その積み重ねが小説なのか。
 村上の小説を読む前に、このことを知っておけば良かった。ちょっと気が重くなるけど村上を再読してみようか。

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| 古本読書日記 | 05:43 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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