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小杉健治    「最終鑑定」(集英社文庫)

 主人公の江崎伸介は、帝都大学法医学部の助教授だったが、我が国の法医学の権威嵯峨教授に逆らい、大学から追放され、クラブの女性のヒモのような暮らしをしていた。

 ある日、布施源蔵のアパートで源蔵の妻幾重が死体になってみつかる。部屋の鍵はかかっていたままで外から誰か侵入した形跡はない。源蔵が殺害したのではと警察は疑ったが、源蔵が首をしめた痕跡が無い。幾重は生まれつき心臓が弱く突発性心筋症という難病を患っていた。源蔵は朝起きたらすでに妻は死んでいて自然死と主張、しかし警察は殺しと判断、
源蔵を責め立て、自白に追い込む。

 精神鑑定というのは、鑑定する医師により、結果が異なることはしばしばある。物理的な死因は、法医学の医師により明白にわかるものだと思っていたが、医師により、鑑定が異なり、死因の特定が法廷で争われることがあることをこの作品で知った。

 鑑定は検察が選んだ鑑定人は、警察よりの鑑定を提出するし、弁護人推薦の鑑定人は被疑者の立場にたった鑑定書を法廷に提出する。

 嵯峨教授は法廷医学の権威で、自分のだす鑑定書は無謬であり、彼の鑑定内容を批判したり、疑問をはさむことは許さず、批判者は、学会から追放された。

 その被害にあい、無職となった江崎は、幾重死事件鑑定に権威者嵯峨をひっぱりだし、彼の鑑定を別の弁護側の鑑定医に否定させ、嵯峨の権威をズタズタにし、嵯峨の人生を破壊しようと目論む。

 そして結局検察からは嵯峨の鑑定を含め2つの鑑定書が提出され、同じく弁護側からも2つの鑑定書が提出されたが、いずれの鑑定書も死因の決め手を欠き、死因不明により源蔵は無罪となる。

 作品は料亭の女性、高級クラブの女性がからみあう。小杉はこの絡み合いを多くのページを割いて描く。
 私にはそこが、読んでいてうるさく、あまり集中できなかった。この女性とのからみは小説の半分くらいでよかったのではと思った。緊迫感が薄れる。

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| 古本読書日記 | 06:19 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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