川上未映子 「愛の夢とか」(講談社文庫)
谷崎潤一郎賞を受賞した短編集。
川上さんの書く文章は本当にすばらしく、ずっと印象に残る。
「三月の毛糸」という作品で、京都のホテルに泊まった若い夫婦。何もすることがない。そんなとき夫が窓枠に腰かけてぼんやり外を眺める。その時の表現。
「それから立ち上がって今度は窓枠に腰かけ、色々な物の境目が数秒ごとにあいまいになってゆく夕暮れの街をみおろしていた。」
これは、夕暮れに溶けてゆく街の風景が、本当に時間の移ろいがたった2行で的確に表現されている。見事だ。
また別の短編。
ある著名な小説家が亡くなったことが今朝の新聞にでていた。
その作家の作品は高校3年からつきあっていた雨宮君が大好きでいつも読んでいた。雨宮君とはよく植物園でデートした。その時も、その小説家の本を読んでいた。
そんな雨宮君とは5年後に別れた。雨宮君は「好きな人に出合ってしまった。」と言った。
私は、「出会ったのはその人ではなくて私じゃなかったの。」とかみつくように言った。
そして、別れても、その小説家が亡くなったら次の日、また植物園で会おうと約束した。
小説家が亡くなったのは別れて12年後。
新聞報道の翌日、重い腰をあげて私は植物園に電車に乗ってでかけた。
植物園についたが、雨宮君はいなかった。先に来て帰ったかもしれない。それから2時間植物園で雨宮君を待った。しかし雨宮君はやってこなかった。
植物園から駅までとぼとぼ歩いた。電車では疲れ切って眠気に襲われた。あと3駅で降りる。しかし眠気がすごい。寝たらどこに行ってしまうだろう。
でも3駅目の駅で私は降りて、アパートまでの道を歩いて帰宅した。
植物園に出かけなければ、いつものようにアパートでぐだぐだと一人で過ごしただろう。
植物園は遠く、本当に疲れた。それにしても、私には長い一日だった。
収録されている「日曜日はどこへ」より。印象深い作品だった。
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川上さんの書く文章は本当にすばらしく、ずっと印象に残る。
「三月の毛糸」という作品で、京都のホテルに泊まった若い夫婦。何もすることがない。そんなとき夫が窓枠に腰かけてぼんやり外を眺める。その時の表現。
「それから立ち上がって今度は窓枠に腰かけ、色々な物の境目が数秒ごとにあいまいになってゆく夕暮れの街をみおろしていた。」
これは、夕暮れに溶けてゆく街の風景が、本当に時間の移ろいがたった2行で的確に表現されている。見事だ。
また別の短編。
ある著名な小説家が亡くなったことが今朝の新聞にでていた。
その作家の作品は高校3年からつきあっていた雨宮君が大好きでいつも読んでいた。雨宮君とはよく植物園でデートした。その時も、その小説家の本を読んでいた。
そんな雨宮君とは5年後に別れた。雨宮君は「好きな人に出合ってしまった。」と言った。
私は、「出会ったのはその人ではなくて私じゃなかったの。」とかみつくように言った。
そして、別れても、その小説家が亡くなったら次の日、また植物園で会おうと約束した。
小説家が亡くなったのは別れて12年後。
新聞報道の翌日、重い腰をあげて私は植物園に電車に乗ってでかけた。
植物園についたが、雨宮君はいなかった。先に来て帰ったかもしれない。それから2時間植物園で雨宮君を待った。しかし雨宮君はやってこなかった。
植物園から駅までとぼとぼ歩いた。電車では疲れ切って眠気に襲われた。あと3駅で降りる。しかし眠気がすごい。寝たらどこに行ってしまうだろう。
でも3駅目の駅で私は降りて、アパートまでの道を歩いて帰宅した。
植物園に出かけなければ、いつものようにアパートでぐだぐだと一人で過ごしただろう。
植物園は遠く、本当に疲れた。それにしても、私には長い一日だった。
収録されている「日曜日はどこへ」より。印象深い作品だった。
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