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酒井順子    「紫式部の欲望」(集英社文庫)

 「源氏物語」は日本文学史上最高傑作である。しかし読んだ人は少ないだろう。なにしろべらぼうに長いのである。54帖100万字もある。

 その大長編にエッセイストの酒井順子が古語辞典を片手に完読。そして「源氏物語」の真髄を面白く、わかりやすく解説しているのが本書。

 主人公の光源氏は王族の子孫。一説には藤原道長とも謂われ、紫式部はその恋人だったとも謂われている。
 光源氏は地位も権力もあり、美麗で女性がすがりつき抱かれたい憧れの男性。それゆえ女性は光源氏よりどりみどり。
 平安時代。女性は自分の姿を人前にさらさない。着るものは十二単で体形は全くわからないし、容貌は扇子で顔を隠しわからないようにしている。

 それに、寝屋は現在のように電灯がなく、真っ暗。娘を抱いているつもりで、実際はその母親を抱いていたりするなんてことがしばしば起こる。

 「源氏物語」がすべて、美女ばかりを源氏が抱いているのでは、平凡な物語になってしまうが、そこは天才女性作家紫式部、とんでもない醜女を登場させている。
それが末摘花。

 なにしろ、その前段で、男たちの間で「こんな女性」がいいと品定め談義をしている。
それは、「雑草がからみついて荒れ果てた門の中に、思いの他可愛い人が住んでいる。ぐっとくる」ということになり、光源氏も「ボロ家萌え」となり、あるボロ家に忍び込む。そこに待っていたのが末摘花。

 抱いているときはわからなかったが、翌朝シルエットをみて「ああみっともない」と嘆く。

その鼻が「普賢菩薩の乗り物とおぼゆ」と式部は表現する。
普賢菩薩は釈迦の脇で白象に乗っている。つまり彼女は象並みの鼻の持ち主だったのである。そしてさらに式部は書く。

 あきれるほど高く長い鼻の先は少し垂れて、そこがまた赤くなっていると。更に、それでも下のほうが長く見えるということは、相当に長い顔ということ。痩せて、肩のあたりは、着物の上からでも気の毒なほど痛そうに骨ばってみえる。

 更に女性というのは恐ろしい。酒井さんは末摘花について極めつけの言葉を発する。
我が国の文学史上最もブスな女性と。

 それに比べ男は優しい。
光源氏は、この末摘花を思いやり、生活面のこともこまめに思いやり、門番の衣服まで面倒をみてあげたそうだ。

 これだから光源氏は女性からもてる。

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| 古本読書日記 | 06:06 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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