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大沢在昌    「烙印の森」(集英社文庫)

 芝浦の人気のない運河沿いにたたずむバー「ポット」。ここに集まるのは、元傭兵のマスターをはじめ裏稼業に携わる者ばかり。盗聴のプロ、ニューハーフのボディーガード、そして主人公の犯罪現場専門のカメラマン。

 主人公が犯罪現場撮影にこだわるのは、伝説の殺し屋フクロウの正体を暴くため。フクロウは殺人を行った現場に必ず戻ってくるといわれている。だから、現場に集まった野次馬たちの写真を撮り、フクロウの正体を暴くためだ。

 そして、ある日主人公はフクロウに狙われはじめる。

この作品は、変わったハードボイルド小説だ。
普通ハードボイルド小説は、ヒーローは私立探偵だったり、一匹狼の殺し屋だったりする。
もちろん彼らが人生の底辺を彷徨う存在になってしまった背景は簡単に小説で触れられるが、その背景は物語とは関係ないものになっている。

 ところが、この作品では、後半が少し過ぎたところから、何故主人公が犯罪現場専門のカメラマンになったのか、その人生を詳細に描く。まるで主人公の半生を描いている人生記になっている。ハードボイルドの色彩が殆ど消えてしまっている。

 しかしこの人生記がフクロウの正体を暴く鍵を握っていることになる。
ハードボイルドの影は薄いが、人生記としては味わいのある作品になっている。でも、大沢の他の小説とトーンが異なり、少し驚いた。

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| 古本読書日記 | 07:16 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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