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井上荒野  「その話は今日はやめておきましょう」(毎日文庫)

 最近は、定年が60歳から65歳になり、65歳になっても、それで仕事をやめることは殆どなく、たいていは70歳まで働く。

 60歳で仕事を辞めると、まだ体は元気だし、中年という感じで、とても老人だという気分にはならない。だから60歳から70歳までが会社という頚城がとれて、充実した活気ある日々が送れる。

 しかし70歳まで働いて、自由になると、その途端、老人になったなあという雰囲気になる。
新聞の訃報蘭に目が行くようになり、70歳代で亡くなる人もめずらしくなくたくさんいる。

 私は朝4時に起きて、犬の散歩をする。この間、ほぼ同い年の散歩をしている人に出合う。その人は左足が少し不自由で、リハビリのために歩いているようだった。

 その人が歩道にある花壇につまずいて、バタンと倒れた。びっくりして、助けねばと思い近寄ると、顔から血をながしている。そして驚いたことに、涙をいっぱい流して、大声をあげ泣いていた。

 その人には、今までにも散歩でであったが、その日を最後に散歩で出会ったことは無い。

 この物語は、仕事をやめた71歳の昇平と69歳になる妻のゆり子、それに、この家庭にお手伝いとして通う一樹、それぞれが順番に視点が変えて、描かれている。

 ゆり子の昔の恋人で、家も建ててもらった尚也に階段の手摺をつけてもらうことになった。尚也はそのとき膵臓癌になっていて、手遅れ状態だった。無理して造作を依頼して、
しばらくしたら亡くなった。

 葬式に参列した、昇平、ゆりこ夫妻が帰りに和食屋にはいり食事をする。
そこでの会話。

 「人は死ぬものなんだなあ。」
 「それで最後は一人で残されるんだなあ。」
 「そろそろ一人になることや、死ぬ覚悟をしなきゃあいけないわね。」
 「俺のあとをたのむよ。」 
 「何言ってるのよ。私のほうがさきに死ぬかもしれないのに。」
我が家もこんな会話をする日が近くなってきた。

 物語は、3人の視点がテンポよく変わり、いつもの井上作品より面白く読めた。

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| 古本読書日記 | 06:02 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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