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中村文則   「その先の道に消える」(朝日文庫)

アパートの部屋で、男が殺される。この男は、緊縛師だった。

 緊縛師の名前は吉川一成。この緊縛の世界で何人かが殺され、ミステリーの体裁をとりながら、内容は緊縛の世界に生きる、あるいは、夢や希望とは縁のない人々の生きる基盤はどこにあるかを追求してゆく。

 吉川は、どんどん転落していって最後、緊縛師になるのだが、吉川は人生の記録帖を残している。その記録帖の中の、緊縛をされている女性の独白が、私の想像を超える。

「私は縄で縛られると・・・・強く抱きしめられるみたいで、解放された気持ちになる。
 固まっていたものが、フワっと、軽くなる・・・。お互い同意の上でも、無意識には、性への抵抗があったりする。でも、縛られると、もう・・・・どうしようも、ないでしょう?抵抗する気持ちもなくなるの。そして、自分が、どれだけ感じても、許されるような、気持ちになる。縛られて、抵抗できないのだから、普段と違う自分になることを、許せる。自分が解放される。」

 常識的には、緊縛されている女性は、快楽はあるかもしれないが、痛みもあるし、苦しさもあると思うのだが、中村はそれを突き抜けて、人生が頚城や辛さから解放されて、最も自由で幸せな状態になると緊縛を描く。今までにここまでSM緊縛を想像した作品は読んだことが無い。

 それと、緊縛に使う麻縄。麻縄は神の領域と現世を隔てる境界で、麻縄で囲まれた場所は神域で、神様が降臨することもある。
 そして、緊縛の場面で、麻縄が意志をもって動き、女性を縛りあげてゆく。この場面には驚いた、読んでいると、縛られている女性が降臨した神に思えてくる。

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| 古本読書日記 | 06:08 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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