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高橋克彦   「ジャーニー・ボーイ」(朝日文庫)

 この作品は、シティトラベラーの草分け的存在であるイギリスのイザベラ・バードの「日本奥地紀行」をベースに書かれている小説である。同じ題材を扱った小説に中島京子の「イトウの恋」がある。

 イザベラ・バードは1831年イギリスの牧師の家に生まれている。病弱で、22歳のとき、医師の勧めで、療養をかねてアメリカを旅行。その紀行記を本にして出版しベストセラーを手に入れる。その後オーストラリア、ハワイを旅して紀行記をものにし、トラベラーの地位を獲得して明治11年、日本にやってくる。この前年には西南の役があり、翌年大久保利通が暗殺。まだ日本組織体制が揺れ動いていた時代だった。

 こんな中、イザベラは東京―日光―会津―新潟―東北-北海道を旅する。

この紀行に案内役、護衛役として面接で選ばれたのが伊藤鶴吉。物語は都会ではなく、田舎の庶民の暮らしを見たいと希望するイザベラと田舎は不潔、みすぼらしい暮らし、それに護衛するにしても危険で避けようとした伊藤の想いとがすれ違い。イザベラにどんどんひきずられ、そのわがままにふりまわされる伊藤の苦闘を中心に物語は描いている。

 日光までは比較的平穏だったが、会津から新潟までは、山々が連なり、道なき道を進み、谷間の危険な道の連続、どうなるかとひやひやする物語が連続。そして作品は新潟までで終了している。

中島さんの「イトウの恋」では、イザベラと伊藤の淡い恋を扱っているが、この作品では武士浪人がイザベラ刺殺の命をうけ、繰り返し伊藤をふくめ、伊藤の護衛役との戦いが頻発する。

 小説を読む感度が乏しくなった所為か、何故イザベラの命が狙われなければならないのか、よくわからないまま戦いだけが描かれ、話にはいりこめなかった。

 物語の終わりに、どういう人間がイザベラを襲ったのか書かれているが、それも抽象的で首をかしげる内容だった。

 もっと前の段階で、刺殺団の詳細を明らかにし、そこから幾つもの手に汗にぎる戦いの場面を描いたほうがよかった。そうすれば緊張感がある物語になったのに。構成に失敗している。

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| 古本読書日記 | 06:26 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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