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三浦しをん    「ののはな通信」(角川文庫)

 ミッション系のお嬢様学園に通っている、ののとはなが高校時代に文通から始めた交際が20年後に終了するまでを描く大河小説。

 文通が始まったのは昭和59年、終了するのが2011年。小説は2人の交わす書簡メールで綴られる。
 前半は、「秘密の花園」川端康成の少女小説の雰囲気。ののとはなは文通を通じて、愛し合う関係になる。
 ここが高校時代のハイライト。

 与田という教師が登場。この与田が、上野という女生徒とたびたびホテルで愛し合う。与田は妻がいるが、この妻も教え子。この密会現場をののとはなが押さえ、ホテルに2人で入るところを写真にとる。しかし、これで何かがが始まることは無く、全く理解が不能なのだが、ののが与田を誘い同じホテルで密会する。しかも、この時の写真がネットで拡散。ののは停学を喰らうが、与田にはお咎めなし。与田のような悪者は、徹底的に厳しい制裁を加えてほしいと納得できないまま読み進む。結局与田はその後、系列の男子高校へ転勤。そこをやめ予備校講師になったことが、だいぶ物語が進んで明らかにされる。

 はなは当然ののとは愛を誓いあった仲なのに、裏切られたと怒り狂う。
そこは、何とか静まり、ののは東大へ、はなは私立女子大へと進学。2人の交流は続くが、今度ははなが外交官を紹介され、2人は結婚する。そして2人の愛の交流は一旦終了する。

 それから20年後、はなは大使夫人となってアフリカの小国ゾンダに夫と駐在。一方ののはフリーの雑誌記者になっている。ののは悦子さんという恋人と同棲している。

 この作品、前半は手紙の交換も女子高生らしく、純情と憧れがないまざって読み応え十分なのだが、20年後の後半がよくない。

 交換書簡体がメールに変わるが、全くメールらしくない。一つのメールが小説数ページにわたり、こんな長いメール交換はあまりない。しかも内容が、通常のしゃべりの交換でなく、小説や評論の文章になっていて、全くメールの実感が伴わない。

 無理やり、書簡体を通したため、現実から遊離してしまった。
頭で考えた文章をメール体に翻訳してほしかった。

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| 古本読書日記 | 05:58 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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