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春口裕子    「悪母」(実業之日本社文庫)

 この作品は、ママ友の嫌らしさ愚かさ、恐ろしさをこれでもかというくらい描いた連作ミステリーである。物語では、嫉妬、恨み、憎悪などにより、多くの事件が発生する。

こんなには、事件は発生することは無いだろうが、ひとつ、ひとつはどれも発生するだろうと思わせ、それが物語に納得感を与えている。

 この物語は、子どもを介して友達ができるのだが、動機はすべて自分の子供のためが根底にある。

 学校のクラスは、勉強、スポーツ、クラブ活動により、あるいは、発生する問題はいじめ、不登校など、基本はクラス内で収まる内容が殆ど。だけど都会の学校は少し違う。習い事の幅が広くなる。この物語では、タレント養成塾や将棋塾に異常に熱心に通わせている親子が登場する。

 また有名幼稚園、小学校に他人の子供を落とすため、ネットに誹謗中傷を投稿したり、対象の学校に受験相手を貶める手紙を送ったりする。表面はママ友を装っているが、内実は我が子のために悪辣なことは、後先を考えずに実行する、そのすさまじさは恐怖さえ覚える。

 友達。それは、人生の時々において、会社のため、仕事のため、家族のため、夫のため、夢のため、恋人のためと自分に言い聞かせて、必死に友達との関係を創り、守ろうとする。

 しかし、その関係は必要がなくなれば手放す時がくる。

この物語の主人公、佐和子が独白する。
「自分の願ってきたことは、いつも一つだった。たくさんはいらない。一人でいい。自分が一番に思うその相手から、一番に思われたい。ずっとずっと思われたい。なのにどうして、どうにもならない。小学校でできた友達も、中学校でできた友達も、高校も大学も、卒業すればおしまいで、会社だって退職すればそれっきり。必死に紡いだ友情の糸は、節目がくるとプツプツ切れて、二度とつながることはない。だからまた一から紡ぐ。長く長くつながり続ける糸たちを横目に見ながら、せっせせっせと新しい糸を。今度こそと願い、いつまた切れるかとビクビクしながら。」

 うーん溜息ばかり。辛いなあ。

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| 古本読書日記 | 06:30 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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