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堂場瞬一    「焔」(実業之日本社文庫)

プロ野球の名門チームスターズの看板選手沢崎は今シーズンが終わればFAの権利を取得する。このFA権を行使して、来季は大リーグいりを目論んでいる。

 自らの価値を最大に高めるために、ペナントレーズの優勝。現在打率、打点、本塁打で一位をすべて争っている。全部でトップを獲り、3冠王の称号を引っ提げて大リーグいりできたらと考えている。残り5試合を残し福岡イーグルスとペナント獲得で熾烈の争いをしている。3冠王に関しては、去年スターズに移籍してきた神宮寺が沢崎の前にたちはだかる。

 この沢崎の大リーグ入りの代理人をしているのが、沢崎の高校時代の野球部の同僚藍川。藍川も沢崎の価値を上げるために暗躍する。
 この暗躍や、神宮寺との三冠王争いは、なかなか面白い。

しかし、半ゲーム差での首位イーグルスとの最終戦から、堂場の熱情が高まりすぎ、文章が劇画調、大げさになり、これはだめだとがっくりとする。

 何しろ、沢崎が全打席ホームランを打つと宣言し、4打席ホームランを打つところから白ける。さらに最後の5打席目の描写。

 「大道がワインドアップをする。一瞬沢崎を睨みつけると、低く沈み込むようなフォームから二球目を投じた。これだ。このボールを俺は待っていた。再び時の流れが穏やかになり、ボールの綺麗な上向き回転がはっきりと見える。これこそ、大道の最高のボールだ。内角高めに入ってきて浮き上がり、振り出したバットの上を通りすぎるようなボール。
 沢崎は自然にスウィングを微調整した。心持ち体を伸ばすようにし、胸のマークよりわずかに高い位置にバットの軌道を思い描く。全身の筋肉が、コンマ何秒の単位でその修正に従った。ボールを呼び込む。つまらないファウルなんか打ちたくない。このままレフトスタンドへ、いや、場外へ一直線だ。背筋がぴりぴりと緊張し、踏み出した左足が土に突き刺さる。」

 たった一球のボールがこんなに長い表現になる。読み通すのが苦しい。

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| 古本読書日記 | 06:24 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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