阿川大樹 「終電の神様 始発のアフターファイブ」(実業之日本社文庫)
活字があればなんでも良いということで、ブックオフが紹介する古本を片っ端から購入して読んでいる。自分の感覚が世の仲からずれているからだろうが、めったにこの本は良かったという本に出合わない。世の中には自分に合っている作品というのは無いものだと思って、うんざりしていた時にこの短編集に出合った。この作品はピッタリと自分の思考にあった。作品はエキナカ大賞を受賞している。
岩谷ロコは岩手の花泉から昼前新幹線に乗ってギターをかついで東京にやってきた。
新宿でストリートミュージシャンをして、いつか東京で歌手になるためだ。
しかし夕方の新宿は人が溢れ、通りで歌を歌う場所は無いし、何より気後れして歌う勇気が出てこない。
新宿を彷徨っていると、中学生くらいの3人がホームレスのおじさんを騒ぎながら蹴っているところに遭遇する。ロコは武道の心得がある。それで3人を蹴散らしてあげる。
おじさんはワタナベさんと言った。そしてロコの持っているギターをみて「エピフォンだね。さわらしてくれる?」
ロコはびっくりする。エピフォンを知っている。このオジサン只者じゃない。しかし、それにしてもオジサンは臭い。お金は無いわけではないが、銭湯に匂いがすごすぎて入れてもらえないから、公園の水道で体を洗うが、着ている服の匂いはとれない。とオジサンは嘆く。
2人はカラオケ屋にゆく。そこでオジサンのギターで、ロコは心行くまで歌う。
カラオケ屋をでると、新宿は白み始めている。
オジサンはトイレに入り、また体を洗う。新宿のユニクロは24時間営業しているか、知らないのだが、ロコはユニクロにオジサンの着るものを買いに行く。
トイレに帰ってくるとオジサンが警官につかまっている。近所から通報があったらしい。
懸命にロコはこの人は私の友達だと主張して、オジサンを引き取る。
オジサンに新しい服を着せて、通りにでる。夜の仕事を終えて、始発で家へ帰る人。それから出勤してくる人がたくさん交差している。
そこでオジサンの演奏で、ロコが歌う。
「一緒に見上げているこの空が、ひっくり返って落ちてきても
山が砕けて、海に沈んでも、わたしは泣かない、絶対泣かない、涙も流さない。
そう。あなたがわたしのそばに立っていてくれさえすれば。
ダーリン ダーリン そばにいてわたしのそばにいて。スタンド・バイ・ミー」
たちどまった人は、そのまま最後までちゃんと聞いてくれて、ギターケースにお金をいれてくれる。
おじさんが言う。
「さあハローワークに行って仕事を探さなきゃあ。」
ロコはびっくり。泣きながら「おじさん、また見に来てよ」と声をあげる。
おじさんが言う。
「東京ドームでも、武道館でもロコをみにいくよ。」と。
おじさんとロコの交流が、新宿という舞台で生き生きと描かれる。いい作品だ。
ランキングに参加しています。
ぽちっと応援していただければ幸いです。
<
岩谷ロコは岩手の花泉から昼前新幹線に乗ってギターをかついで東京にやってきた。
新宿でストリートミュージシャンをして、いつか東京で歌手になるためだ。
しかし夕方の新宿は人が溢れ、通りで歌を歌う場所は無いし、何より気後れして歌う勇気が出てこない。
新宿を彷徨っていると、中学生くらいの3人がホームレスのおじさんを騒ぎながら蹴っているところに遭遇する。ロコは武道の心得がある。それで3人を蹴散らしてあげる。
おじさんはワタナベさんと言った。そしてロコの持っているギターをみて「エピフォンだね。さわらしてくれる?」
ロコはびっくりする。エピフォンを知っている。このオジサン只者じゃない。しかし、それにしてもオジサンは臭い。お金は無いわけではないが、銭湯に匂いがすごすぎて入れてもらえないから、公園の水道で体を洗うが、着ている服の匂いはとれない。とオジサンは嘆く。
2人はカラオケ屋にゆく。そこでオジサンのギターで、ロコは心行くまで歌う。
カラオケ屋をでると、新宿は白み始めている。
オジサンはトイレに入り、また体を洗う。新宿のユニクロは24時間営業しているか、知らないのだが、ロコはユニクロにオジサンの着るものを買いに行く。
トイレに帰ってくるとオジサンが警官につかまっている。近所から通報があったらしい。
懸命にロコはこの人は私の友達だと主張して、オジサンを引き取る。
オジサンに新しい服を着せて、通りにでる。夜の仕事を終えて、始発で家へ帰る人。それから出勤してくる人がたくさん交差している。
そこでオジサンの演奏で、ロコが歌う。
「一緒に見上げているこの空が、ひっくり返って落ちてきても
山が砕けて、海に沈んでも、わたしは泣かない、絶対泣かない、涙も流さない。
そう。あなたがわたしのそばに立っていてくれさえすれば。
ダーリン ダーリン そばにいてわたしのそばにいて。スタンド・バイ・ミー」
たちどまった人は、そのまま最後までちゃんと聞いてくれて、ギターケースにお金をいれてくれる。
おじさんが言う。
「さあハローワークに行って仕事を探さなきゃあ。」
ロコはびっくり。泣きながら「おじさん、また見に来てよ」と声をあげる。
おじさんが言う。
「東京ドームでも、武道館でもロコをみにいくよ。」と。
おじさんとロコの交流が、新宿という舞台で生き生きと描かれる。いい作品だ。
ランキングに参加しています。
ぽちっと応援していただければ幸いです。

| 古本読書日記 | 06:10 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑