中山七里 「能面検事」(光文社文庫)
中山七里が造型した人物の中で、最も魅力的な人物の一人が不破俊太郎大阪地検検事。
どんな圧力にも屈せず、微塵も表情を変えないから能面検事と言われている。もちろん、そうなった原因はあるのだが・・・。しかも通常警察から犯人とおもに上げられてくる調書、証拠物品に疑問があるときは、担当警察に紹介し、もし必要があれば捜査は警察が行うのだが、不破検事も、自らが事務官と2人で捜査を行い真実を暴く。
通常こういう主人公は会社、社会の不正を類まれな能力と強い情熱、熱血により暴き、みんなのヒーローとなり、拍手喝采を浴びるのだが、不破は常に冷静で見た目は冷たく、情熱は伝わってこない。
こんな検事は、現在の組織では受け付けられず、簡単にはじかれる。小説でしか活躍できない検事である。
上司の次席検事と不破の会話。
「検察は警察のために存在するのではありません。法の秩序を護るために存在しています。誤認逮捕に端を発する冤罪などもってのほか。今しがた次席検事の仰った捜査方法が捜査員のダメだしをする結果になるとしたら、むしろそれは隠蔽するより露呈したほうがいい。」
「検事。理想の高みにたった意見は拝聴に値しますが、府警本部や所轄の立場を考えると同情心も沸いてきます。警察と検察の馴れ合いは厳に慎むべきですが、同じ犯罪を摘発する組織として徒にいがみあうものではありません。」
「いがみあうつもりはありません。一般人に対して捜査し、逮捕する権限を有しているのなら、それに相応しい知見と能力を備えなければならないという、至極当然のはなしをしているだけです。それが出来ないというのなら警察官も検察官もやめた方が世のため人のためです。」
そして、西成ストーカー事件捜査で、証拠品、捜査資料一部紛失が発覚。それにより、大阪府警はトップから、下部に至るまで大量処分がなされる。不破検事は、府警全部を敵にまわす。それでも、不破検事は全く動揺せず、淡々としている。
会社生活で一度だけでいいから、こんな主張、発言ができていたらなあと思う。
しかし、翌日には会社を追い出されるだろうな。
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どんな圧力にも屈せず、微塵も表情を変えないから能面検事と言われている。もちろん、そうなった原因はあるのだが・・・。しかも通常警察から犯人とおもに上げられてくる調書、証拠物品に疑問があるときは、担当警察に紹介し、もし必要があれば捜査は警察が行うのだが、不破検事も、自らが事務官と2人で捜査を行い真実を暴く。
通常こういう主人公は会社、社会の不正を類まれな能力と強い情熱、熱血により暴き、みんなのヒーローとなり、拍手喝采を浴びるのだが、不破は常に冷静で見た目は冷たく、情熱は伝わってこない。
こんな検事は、現在の組織では受け付けられず、簡単にはじかれる。小説でしか活躍できない検事である。
上司の次席検事と不破の会話。
「検察は警察のために存在するのではありません。法の秩序を護るために存在しています。誤認逮捕に端を発する冤罪などもってのほか。今しがた次席検事の仰った捜査方法が捜査員のダメだしをする結果になるとしたら、むしろそれは隠蔽するより露呈したほうがいい。」
「検事。理想の高みにたった意見は拝聴に値しますが、府警本部や所轄の立場を考えると同情心も沸いてきます。警察と検察の馴れ合いは厳に慎むべきですが、同じ犯罪を摘発する組織として徒にいがみあうものではありません。」
「いがみあうつもりはありません。一般人に対して捜査し、逮捕する権限を有しているのなら、それに相応しい知見と能力を備えなければならないという、至極当然のはなしをしているだけです。それが出来ないというのなら警察官も検察官もやめた方が世のため人のためです。」
そして、西成ストーカー事件捜査で、証拠品、捜査資料一部紛失が発覚。それにより、大阪府警はトップから、下部に至るまで大量処分がなされる。不破検事は、府警全部を敵にまわす。それでも、不破検事は全く動揺せず、淡々としている。
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| 古本読書日記 | 06:33 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑