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海堂尊    「玉村警部補の巡礼」(宝島社文庫)

 恐怖症克服のために、長期休暇を取得して、四国巡礼の旅に玉村警部補がでかける。そのお遍路さんの旅にまさに恐怖心の元凶ともいえる、警察庁のふてぶてしい加納警視正が何故かついてくる。

 物語は巡礼の途中で起きる事件を追う、連作短編集になっている。

伊予に慈愛寺という寺がある。別名蚊帳寺といわれている。蚊は空海弘法大師の生まれ変わり。崇めたて、決して殺してはいけない。玉村と加納が蚊帳寺の近くに泊まった日は、半年に一度、お籠りの儀式を行う日。寺の敷地にある、洞窟に信者がはいり、その洞窟に大量の蚊を放ち、空海の生まれ変わりの大量の蚊に血を吸ってもらう。そうすると煩悩や邪念が吸い取られ気分が爽快になる。

 しかし、それでは体が痒くなって我慢できないのではと思うが、この寺の住職善導和尚がかの浪速大学で蚊を研究して、吸われても痒くならない蚊を作りだすことに成功。今はその蚊を使っている。

 洞窟は小部屋に区切られていて一人ずつ、個別の穴に閉じ込められる。面白いのは、血を吸う蚊は、血統は一つで別の血統の蚊とは混合していてはいけない。それで、蚊は信者単位に別袋に入れられていて、信者が洞窟で寝入った時間に、蚊袋を持った人が洞窟の扉を鍵であけて、それぞれの袋の蚊を解き放つ。

 この修行中に田中さんという信者が亡くなる。しかも、体の血が全く無くなっている。しかし、血はどこにも付着していない。
 蚊がいくら多くても、人間の血を全部吸い尽くすことなどありえない。巨大なお化けのような蚊が現れたのか。

 この謎に玉村、加納コンビ、主に加納警視正が挑戦する。事件が奇妙で、面白い。
よくこんな発想を海堂は思いついたものだ。真相も面白い。

 しかしいくらご利益があって、血を吸われてもかゆくならない蚊でも、こんな洞窟にははいりたくない。

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| 古本読書日記 | 06:30 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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