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一色さゆり    「神の値段」(宝島社文庫)

 このミス大賞 受賞作品。

この作品に登場する、インクアートの芸術家、川名無名は誰もその姿を知らない。この社会に存在しているのかもわからない。

 川名無名と接触しているのは、彼のアトリエで働く、ディレクターの土門と彼の作品を一手に購入販売している画廊経営者の唯子。その唯子がアトリエで首を絞められ殺される。

 その真相を唯子に誘われ画廊に働く佐和子が追うことになる。
どうして、アトリエには多くのスタッフがいるのに無名は、スタッフと顔を合わすことなく作品を創ることができるのか。

 アニメや漫画。どうなっているのか詳しく知らないが、発想は作者がするが、実際の画を描くのはアシスタントやスタッフが行う分業になっている?

 川名無名は毎月1作品を作成している。いつも20日になると川名からメールが届く。
それがこんな内容。
 THSJ 835 19 3 68 107 9 100
ASEK 191 43 37 81 23 18 120
SFUH 97 54 2 62 26 40 80
これが作品を作成する手順を示す指示リスト。全部で100冊にもわたる作画マニュアルに載せられている。

 例えば、使う筆は、何製で毛の太さはどれを使うのか。使う墨汁はどれを使い、薄める水はどのくらい使うか。その場合の筆の使い方はどうするか。筆の持ち方。立って描くのか。正座して描くのかなどが指示されている。

 最初は戸惑うが、描いているうちに無名の意図がわかるようになるのだそうだ。
無名の暗号の指示によりできた作品は、携帯で写し取り、それを無名に送り、無名のOKがでれば完成となる。

 その作品が、唯子の画廊に持ち込まれ、画廊で梱包前に無名がやってきて作品に自筆のサインをする。

 全く無名が筆をとって描くことのない作品が億円の単位で販売される。
しばし、唖然、茫然である。

 こんな方法で、出来上がった作品が現実に存在しているのだろうか。

 この作品では、絵画の梱包の際、紐の結び方にも絵画の種類により細かく規定されているのだが、その規定に沿わない結び方がしてあるのが、事件の真相を解くかぎになっている。

 作品はミステリーなのだが、絵画の流通方法、オークションの実際について詳細に語られ、現代アートの世界を教えてくれる方に力点が置かれている作品になっている。

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| 古本読書日記 | 06:19 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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