柳原慧 「いかさま師」(宝島社文庫)
これを読みたい、あるいは書店に足を運んで面白そうだと手にとって購入して本を読むということが無くなった。ブックオフオンラインでランダムに読んだことのない本を順番に選択してまとめて購入して届いた本を読む習慣になった。
内容で取捨選択しないで、本を読む。単なる活字中毒、読書機械に成り下がった状態。
この本もそんな方法で手にいれた。タイトルから想像して、賭場に登場する賭博師の話かなと一瞬頭をかすめたが・・・。
ところが届けられた本の表紙をみて、驚いた。表紙には16世紀晩年に生まれて、17世紀前半に活躍した画家ラ・トゥールの「いかさま師」の絵が載っていたから。
と言って、私もラ・トゥールを知っているわけではない。日本でもそれほど有名ではないと思う。少し前に中世の絵画の画集をぼんやり眺めていて「いかさま師」が目にとまる。これがユニークな絵だった。
太ったおばさんと、お手伝いのおばさん、そしてうさんくさそうなおじさんが組んだトランプ賭博で、純真そうな青年をやっつけようとしている。太ったおばさんがおじさんに目配せしている左に寄った眼がすごくいやらしい。
ラ・トゥールは20世紀になり、評価があがり、今や億円で作品が売買される大作家になった。この小説によると多作だったが、ペストの流行により、防疫でたくさんの家が焼かれたため、作品の多くが焼失してしまったようだ。また鑑識が確立してなくて、市場にでた作品がラ・トゥール作品かどうか鑑定が困難。それだけに贋作が溢れている。
この物語は、明治の大富豪がラ・トゥールの5作品を日本に持ち込む。この文豪の息子が画家なのだが、作風が変わっていて、とても市場に受け入れられる作品は描けず、最後は困窮して自殺してしまう。
ラ・トゥール作品は今は数億円する。この残されたラ・トゥール作品が画家の家にあるはずだが、その絵を手に入れようとしている人たちが、相続してもらおうと作品を懸命に文豪の家の中を探すのだが、家はゴミ屋敷になっていて、いくら探してもでてこない。
さらに絵の相続をめぐり、変な出来事が次々起こる。この人間模様が面白い。
さらに解説で、明治の大作家は小泉八雲で画家は三男の孤高で自殺した小泉清のことと書かれている。そんなことを知って読むと絵画「いかさま師」の味わいが深くなる。
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この本もそんな方法で手にいれた。タイトルから想像して、賭場に登場する賭博師の話かなと一瞬頭をかすめたが・・・。
ところが届けられた本の表紙をみて、驚いた。表紙には16世紀晩年に生まれて、17世紀前半に活躍した画家ラ・トゥールの「いかさま師」の絵が載っていたから。
と言って、私もラ・トゥールを知っているわけではない。日本でもそれほど有名ではないと思う。少し前に中世の絵画の画集をぼんやり眺めていて「いかさま師」が目にとまる。これがユニークな絵だった。
太ったおばさんと、お手伝いのおばさん、そしてうさんくさそうなおじさんが組んだトランプ賭博で、純真そうな青年をやっつけようとしている。太ったおばさんがおじさんに目配せしている左に寄った眼がすごくいやらしい。
ラ・トゥールは20世紀になり、評価があがり、今や億円で作品が売買される大作家になった。この小説によると多作だったが、ペストの流行により、防疫でたくさんの家が焼かれたため、作品の多くが焼失してしまったようだ。また鑑識が確立してなくて、市場にでた作品がラ・トゥール作品かどうか鑑定が困難。それだけに贋作が溢れている。
この物語は、明治の大富豪がラ・トゥールの5作品を日本に持ち込む。この文豪の息子が画家なのだが、作風が変わっていて、とても市場に受け入れられる作品は描けず、最後は困窮して自殺してしまう。
ラ・トゥール作品は今は数億円する。この残されたラ・トゥール作品が画家の家にあるはずだが、その絵を手に入れようとしている人たちが、相続してもらおうと作品を懸命に文豪の家の中を探すのだが、家はゴミ屋敷になっていて、いくら探してもでてこない。
さらに絵の相続をめぐり、変な出来事が次々起こる。この人間模様が面白い。
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| 古本読書日記 | 05:58 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑