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森下典子   「日日是好日」(新潮文庫)

 この大ベストセラーの名エッセイが出版されておよそ20年がたつのか。

 大学3年性だった作者森下さんが従兄妹のミチコさんに誘われ、家の近くの茶道教室に通い、いろいろ人生にはあったが、25年ずっと通い続ける。長い茶道人生と重ね合わせ、茶道について15章で語りつくす。

 通常本を手に取ると、ここは作者が力を込めて書いているとか、鮮やかな表現だと感動する部分に遭遇する。それを知りたくて本を読む。つまり、作品は盛り上がったり、普通のトーンになったりと抑揚を繰り返す。

 しかしこの作品。すべての章が、印象深い内容、言葉がつまっていて、全く普通に流れる部分が無い。流石にこんな作品にであったことは無い。

 茶道はごくわずかの男性を除いて、習っているのは圧倒的に女性である。しかし歴史物を読むと、信長や秀吉、戦国武将は茶道に強い情熱を持って嗜んでいる。かって、茶道は男、武士の嗜み、教養の象徴だった。

 若い頃、親しい女性に誘われ、茶室に行ったことがある。茶室は小さな部屋で、入口は躙り口と言いちいさく這ってはいらなければならなかった。その躙り口には刀掛けという刀を置いておく場所があった。敵将であっても茶を楽しむ場合は、決して襲いませんということを示すため、と躙り口刀掛けについてはよく歴史物に書いてある。

 茶には「松風」という風の音が常に鳴り続けている茶釜がある。
お湯がわきはじめると、松風が「し、し、し、し」と鳴る。それが、時間がたつと「ヒェー」と変わる。

 その松風の音を聞いていると、瞬間、安寧が訪れる。心地よい無の瞬間である。
武士は外にあっては、常に死と向い合せにいる。
この茶室で、静かな安息、平穏をしばし味わう。

 だから、茶は男の嗜みだったのだ。

 それから森下さんのこの作品で感慨深く感じたところ。

 教育というのは、他人との比較でできるか、できないかを決める。それも期間が定められている。しかし茶道の世界では、20年前に先生の言ったことが、自分の人生と重ね会って、20年後にこういうことだったんだとわかる。つまり茶道は他人ではなく、昨日の自分との比較であるという。

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| 古本読書日記 | 06:18 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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