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藤沢周平    「決闘の辻 藤沢版新剣客伝」(講談社文庫)

 藤沢では、珍しい。藤沢は通常、作者が設定した藩を舞台に、現在のサラリーマンの日常の生活感情に近い藩士、無名の剣の使い手たちを造型して物語を描く。しかし、この作品では、歴史上実在した剣豪を主人公にして、藤沢なりの解釈を加えて描く異色短編集。

 しかも、冒頭の作品「二天の窟」は生涯60余の対決すべてに勝利したと言われている宮本武蔵を取り上げている。

 武蔵は晩年、熊本城主細川忠利に命じられ、兵法三十五か条の覚書を献じたことで、藩に賓客として招かれていた。
 武蔵はその頃、霊巌寺の窟で「五輪書」の執筆にかかろうとしていた。

ここに浪人鉢谷助九郎が武蔵と対決しようと登場する。

 武蔵は当時、すでに老年の域に達しており、体がだいぶ衰えていた。このまま闘えば、負ける。

 闘いは、助九郎が圧倒的に攻め、武蔵必敗の状況だったが、途中で武蔵が闘いをやめ、引き分けにしてしまう。当然助九郎は武蔵に勝利したと思った。そこで、助九郎が熊本を去ろうとする。

 しかし、藩主が武蔵を厚遇しているのは、武蔵が無敗の剣豪であること、また、必勝の兵法書「五輪書」を執筆しようとしている最中、助九郎が「自分は武蔵に勝った」と吹聴されると、熊本から追い出されるし、だれも「五輪書」に見向きもしなくなる。それが武蔵に恐怖を募らせる。

 それで、武蔵は、助九郎の通り道のススキの原に隠れ待ち伏せして、そこから飛び出し助九郎を刺殺する。

 それで武蔵は安心して窟にとじこもり、「五輪書」の執筆に専念する。

令和の今でも、権力者が自分の権勢を維持するために、同じようなことが起きていると思わせる作品だった。

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| 古本読書日記 | 06:05 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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