fc2ブログ

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

藤沢周平    「玄鳥」(文春文庫)

 少し前に藤沢周平を集中して読んだ。一旦藤沢を読むのをやめて、色んな本を読んだが、どうもこれだという本が無く、また藤沢がたまらなく読みたくなった。

 5編の短編集である。

普請組に勤める御手洗孫六は酒が大好き人間だ。しかしいくら飲んでも表情に変化はなく、ピシっと姿勢も変わらず、ふらつくこともなく、自分は酒に酔うということは無いと信じていた。

 孫六は元々、勘定方に勤めていた。藩は財政状態が厳しく、参勤交代の費用は、城下の富商からかき集めた献金で賄っていた。孫六がその金集めに美濃屋善兵衛の屋敷に行く。勘定方というのはとりわけ商人と付き合うのは戒めねばならなかった。当然孫六もその点はしっかり心得ていたのだが、善兵衛の強いひきにより、ついつい部屋にあがり、浴びるほど酒を飲んでしまう。

 そして城に帰り、もらった金を勘定方の上役に差し出す。お金は30両もらったのだが、差し出した金は20両しかなかった。上司は酒の匂いがプンプンするし、飲み屋にでも置き忘れたか、盗られたか、着服したかいずれにしても、孫六の失敗として、勘定方から普請組に孫六を異動させ、俸禄も5石減じた。

 孫六は酒による失敗を身に染みて思い、その後一切酒を手にすることは無くなった。
普請組の仕事もいやがらず真面目に勤め、無くなった10両は別の勘定方に勤めている男が着服したことがその後わかったこともあり、18年後勘定方に戻り、5石も元に戻された。

 18年間酒断ちをしていたのだが、気持ちが高揚して、昔の馴染みの居酒屋に行く。そして昔のように酒をがぶ飲みする。周りの客の中に、城勤めの仲間がいる。みんな孫六を後ろ指でさし、酒で失敗したやつだと口々に言う。そして孫六が声をあげて言う。

「貴様ら、日ごろはこの孫六を見くびってくれているが、その礼に今夜はとっておきの無限流の腕を拝ませてやろう。さあ、出てこい。」
 酒がとくとくと音をたてて身体を駆け回っていた。孫六は愉快だった。こんないい気分になったのは久しぶりであR。
「出てきて勝負せんか。腰抜けめ」
普請場で鍛えた孫六の胴間声は、町の隅々まで響きわたった。

うれしいにつけ悲しいにつけ、酒だ酒だ。で、また失敗するんだよな。

ランキングに参加しています。
ぽちっと応援していただければ幸いです。
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ<

| 古本読書日記 | 06:09 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

COMMENT














PREV | PAGE-SELECT | NEXT