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伊岡瞬  「いつか、虹の向こうへ」(角川文庫)

 この作品は、第二十五回横溝正史ミステリー大賞受賞作品およびテレビ東京賞受賞作品で、伊岡の処女作品である。テレビ東京賞というのは、テレビ東京でドラマ化されることが約束された作品。

 主人公尾木遼平は、元刑事なのだが、ある不祥事の濡れ衣を着せられ、警察を馘首され、今は派遣社員として、警備会社に勤めている。警察くずれ、ハードボイルド作品の主人公としては典型的な人物。さらに不祥事のせいで、妻子には離婚される。この尾木は父親の遺産で、一軒家に住んでいる。この一軒家に3人の居候がいる。

 一人は外国経済ノンフィクションの翻訳家石渡、休学中の大学生柳原、元主婦の村下恭子。
この三人は、それぞれに厳しい環境にあって、やむを得ず尾木の家に居候。そして3人とも変わった個性の持ち主。

特に村下恭子のたどってきた人生は辛く、哀しく強烈な哀切を伴っている。暴力団の裏稼業を巡っての抗争、それに振り回される薄幸の女性、暴力団と警察との癒着。定番がこれでもかというくらい登場する。

 その中で、これは見たことないという場面がでてきて目を見張った。

事件の鍵を握る女性が、どうしてもわからない。すると石渡が昔の行きつけのジャズクラブで探している女性が不法薬剤の運び役をしていたのを見た気がすると言う。

 そして、自分がその女性の素性と今どうしているかバーに行って調べてくると言う。
内容が違法、それゆえ相当な危険を覚悟せねばならない。
しかし、石渡は期待した以上の内容をクラブから仕入れてくる。
実はクラブのオーナーは同性愛者。石渡はオーナーに体を投げだすことで情報を得てきていた。

 ありそうな内容なのだが、この発想はなかなか出てこない。そしてこの場面が、ステレオタイプの作品に味わい深さをもたらしている。

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| 古本読書日記 | 06:37 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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